読書感想文「隆明だもの」ハルノ宵子 (著)
ハルノ宵子とは達観と諦念の人だ。ジンブツいや傑物なのだ。
そんじょそこらの「吉本主義者」は軽く踏み潰される。参ったなー、この吉本の長女は、吉本の考えをほぼ全て理解(本人は否定するだろうがそんなもの信じちゃいけない)し、何なら体現している。やれやれ、敵う相手じゃない。
そんな彼女が語ってくれるのは、美しくもなく、合理的でもない、ケアの話しだ。オメーさんたちが慕っている巨人が朽ちていく様子とは、こーだったんだよ、と言っているのだ。キレイで含蓄のある物語を読者、とりわけ往年の吉本主義者は求めるのだろうが、そんな集団行動のような気持ちの悪いものには乗るわけにはいかないのだ。
家族をプレイすることとは、を考えさせる一冊でもあるし、フリーレンが「英雄というのはどうしても後世の連中が勝手に美化していく。そしてそのうち原型すら無くなってしまうんだ」と言い放つように、ハルノ宵子は多子ちゃんとして美化される父・吉本隆明の偶像を破壊しに行っているのかもしれない。
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