【ショートショート】未来行電車の笛が鳴る
私は、その駅に着くと、そのままホームへと歩いていった。
改札口には誰もいなかったが、ホームまで降りると駅員さんがいた。
「こんにちは」
駅員さんは優しい声で語りかけてくれた。こちらもあいさつをし、そのまま電車を待つ。
「前の会社では、つらいことも、悲しいこともいろいろあったと思います」
(え・・!?なんで分かったの・・?)
以前、働いていた会社は、長時間労働やパワハラ、セクハラが日常的にあって、心身ともにもうボロボロだった。
逃げるように退職をして、体と心を休め、そろそろ動き出さなきゃと思ってるんだけど・・。
「大丈夫です。ここは出発の駅。まもなく電車が来ます」
タタントトン・・。
目の前に電車が停まった。ドアが開くも、なかなか一歩が踏み出せない。
温かい手が肩に置かれた。振り返ると駅員さんが、穏やかに微笑んでした。
「この電車は、未来行きの電車。あなたの覚悟と共に出発します」
・・・
駅員さんの吹く笛が、ピューと門出と共に鳴り響いた。
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