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【ショートストーリー】昔話「せんじょが池」を現代風にアレンジしてみた

埼玉県に伝わる昔話「せんじょが池」を、思いっきり現代風にアレンジしてみました。

元のストーリーは

・「せん」という働き者の娘がいた

・せんは、馬が好きで、飼っていた馬の世話をよくしていた

・馬も、せんによく懐いて、せんのあとをどこへでもついて行くように。

・せんは、困り果てて、家の近くにあった池の方に逃げたが、馬は追ってくる。それで、池のそばにあった松の木によじのぼった。

・馬は、せんが消えてしまったと思ったが、池にせんの姿があった(映っていた)

・それをせんだと思って、馬は池に飛び込んで、そのまま溺れ死んでしまった。

というものです。

このストーリーの要素を取り込んで、作成しましたので、その要素を探しながら読んでみてください!

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「はぁぁぁぁ、憂鬱……」

自分のデスクで、大きいため息と共につい出てしまったぼやき。

「千代、大丈夫?そんなにイヤなら河野さんに同席してもらったら?」

心配そうに話しかけてきてくれたのは、同期のまっちゃんこと松木美香ちゃん。

姉御タイプで、どこか頼りない私を何かと気にかけてくれる。

「うん、大丈夫!河野さんも忙しいだろうし、いつまでも頼ってられないしね」

メーカーの会社に新卒で入って2年目。

入社当時から、先輩上司の河野さんについて、営業を学ばせてもらっていたけど、ぼちぼち1人でもやっていかなきゃ。

「お、どうした?」

まっちゃんとのやりとりを発見されて、河野さんが話しかけてきた。

「河野さん。千代、これから馬橋さんとの商談なんですよ」

まっちゃんが、すかさず河野さんに報告してしまう。

「あぁ、A社の男性社員だよな?ちょっと視線が怖いとか言っていた」

「そうそう、ただでさえ千代はポケッとしているところがあるんだから、気をつけなよ!やっぱ河野さんに……」

「いえいえいえいえ……!大丈夫です!この商談、ちゃんと1人でやってみせます!」

なかなか、契約を取れない自分に焦っていた部分もあったかもしれない。

河野さんとまっちゃんは、必死な私の姿に、困ったように苦笑い。

「じゃあ、何かあったらすぐ呼べよ」

優しい河野さんの言葉にちょっとだけ勇気をもらい、会議室へ向かった。

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「馬橋さんこんにちは。この度は弊社までありがとうございます」

一生懸命つくったビジネススマイルと共に、会議室に入る。

「池田千代さん、こんにちは。今日は、よろしくお願いします」

なぜかいつもフルネームで呼ばれる。そこからして、ちょっとゾっとする。

「それでは、改めまして弊社の商品にについてご説明させていただきます」

資料を元に、説明をしていく。

(どうしよう……、見てる。こっち見てる。全然、資料見てないよね……?)

馬橋さんの視線をずっと感じる。

じわじわと恐怖が広がってきて、ドッドッと鼓動が速くなってくる。

説明している言葉にも、焦りが出てきて、つっかえたり、順序を間違えたりするようになってきた。

「池田千代さん、大丈夫ですか?」

馬橋さんが、ジッと覗き込むように話しかけてきた。

「はっ、はい!すみません…!ちょっとお手洗いに……」

バッと立ち上がり、逃げるようにトイレに駆け込んだ。

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必死でトイレに駆け込んだものの、商談の途中で抜けてきてしまったことに不安が広がる。

(ダメだ……しっかりしなきゃ。1人で頑張らなきゃ)

不安と共鳴するように、心臓はドクドクしている。

洗面台と睨めっこするように、自分を落ち着かせていたが、意を決して前を向く。

鏡に映る自分と対面した瞬間、息を呑んだ。

「池田千代さん、体調はどうですか?」

鏡の中の自分の背後に、のっそりと背の高い馬橋さんの姿があったからだ。

「えっ……」

恐怖で固まった私は、それ以上声も出せないし、体も全く動かせない。

「心配しましたよ。なかなか戻ってこられないので」

そのまま、背後から私の肩に手を置き、そっと耳元で囁かれた。

「どこか体調でも悪いのですか?」

頭のてっぺんから足の先まで、冷たい水がサーと流れるような感じがした。

もう、立っているのがやっとという時、

「千代!大丈夫!?」

「馬橋さん!これはどういうことですか!?」

突然、まっちゃんと河野さんが飛び込んできた。

「会議室に様子を見に行ったら、荷物はそのままなのに2人ともいないから、心配になって探していたの!」

まっちゃんは、ぎゅうっと強張った私の体を抱きしめてくれた。

笑顔だった馬橋さんの表情は、罰が悪そうに歪んでいる。

「別室でお話をお伺いさせていただきます」

と、河野さんに連れて行かれてしまった。

私は、急に現実に戻ってきたような感じで、自分の体温が戻ってくると同時に温かい涙が溢れてきた。

「……うっ…、まっちゃん…、こわっ、こわっかった……」

「そうだよね、怖かったよね!もう大丈夫だから!」

まっちゃんは、更に強く抱きしめてくれて、私が落ち着くまでそうしてくれていた。

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