即興三題噺(3つ目)

≪ルール≫                              三題噺スイッチ改訂版のサイトをクリックして出たランダムのお題3つを使って即興で物語を作る。長さ制限なし。

≪お 題≫                              つる・教師・壇

~~~~~~~~~~~~~~~~話~~~~~~~~~~~~~~~~~

もしかしたらあなたの学校にも・・・。

 私はつる。御年8歳の立派な大人のつるだ。と言っても今は26歳の教師として生きている。

 というのも、私が立派につるとして生きていた時に、森の中で罠にかかってしまったことがあるのだが、その時に助けてくれた人間に恩返しをするため、人間に化け、人間の社会に溶け込んだのである。

 人間になってからはや2年の歳月が過ぎたとき、おばあちゃんから教えられて育ってきたように、恩返しの定番と言えば機織りで布を織って渡すのが定番なののだが、恩人はまだ独身の男性で家にミシンもないため、私はしぶしぶ学生に化け、学校内での恩返しミッションを決行した。恩人はその学校で教師をしていたのだ。家庭科室で腕によりをかけた布を織り、恩人へ手渡したが、恩人はつるでもわかるような苦笑いをしていた。

 布をプレゼントされても困るらしい。おばあちゃんが言ってることと違うではないか。明らかに恩人は困っている様子だったため、布は渡すことなく持って帰った。

 このままでは終われない。恩人に喜んでもらえるまではつるに戻ることはできない。そう考えた私は、学校生活を送りながら恩人が何をすれば喜んでくれるのが探ることにした。

 時間があれば話しかけて、恩人の好きなものや好きなことを聞き出そうとしたが、恩人に好きなものは何もなかった。ただ一つ、私が必死に勉強する姿をとても喜んで見守ってくれていた。

 私も、恩人が喜んでくれることがうれしくて必死で勉強した。弁論大会にも出場し、最優秀賞を獲って、壇上で表彰されたときは涙を流して喜んでくれた。

 そんなこんなで時は過ぎ、ついに最終学年を迎えることになってしまった私はとても焦っていた。このままでは恩返しすることなく卒業することになってしまう。

 2年もJKとして生きてきた私は、一般人間男性がどういったもので喜ぶのか、コンビニの雑誌でマスターしていた。

 男性は手作りのマフラーが好きなのだ。ただの布を渡してもダメなのだ。過去の失敗から学んでこそ立派な人間・・いや私はつるなのだが・・まあそんなことはどうでもいい。とにかく恩人が喜んでくれたらそれでいいのだ。

 私は恩人の誕生日である9月27日に意を決してマフラーを渡すことに決めた。

 当日の放課後、私はドキドキしながらほかの生徒が帰るのを待っていた。これほど心臓は早く動くものなのか。つるのころは越冬するときだけだったのに、人間になってから恩人と話すたびに心臓が早く動く。もしかしてこれが恋というやつなのか。たったの2年だが、私も人間になっじめて来たのかもしれないな。もうすぐ約束の時間になる。恩人には18時に教室に来てくださいと伝えていたのだ。約束の時間通りにガラガラと教室の扉が開いた。

 扉の前には、一羽のつるが立っていた。

 この土壇場で、私は夢でも見ているのであろうか。逆に恩人がつるになって現れる物語を私はおばあちゃんから聞いたことがない。つるが何かギャアギャアと叫んでいる。人間に化けている私には何を言っているかさっぱりだ。もしかしてことつるはおばあちゃんなのか?とりあえず私もつるに戻るしかないのか。

 このつるは恩人であった。もはや恩鳥である。この恩鳥、面倒くさいから恩人とすると、この恩人は数百年も前から人間として生きてきたらしい。私と同じように、つる時代に罠にかかったところを人間に助けられ、その恩返しに、人間のために何かできることはないかと模索した結果、教師に行き着いたらしい。

 私が転校してきた時から、つるであることはばれていたらしい。千田鶴子という名前と、あとは単純に鳥臭かったことから、この前助けたつるだと簡単に分かったという。どうりで転入当日は誰からも話しかけられることがなかったわけだ。

 それでも黙っていたのは、私が昔の自分のように人間として成長していく姿に喜びを感じていたらしい。おかげさまで、私はもはや東大でも簡単に合格できるのではないかと思うほど賢くなった。

 恩人と話をしているときに気づいたのだが、心臓の高鳴りはすでに無くなっていた。人間の時の恩人はイケメンであったが、つるに戻るととんでもないじじいだったからだ。しかし、こんなじじいも、命を助けてくれた恩人であることに変わりはない。何か恩返しをしないといけない。つるとばれてしまった以上何も隠すことが無くなった私は、単刀直入に聞いた。

「あなたの望みは何ですか?」        (製作時間:130分)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?