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読書日記

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2024年1月の記事一覧

自らの生のスタイルに住まうことのくつろぎ:自分のものとして所有することのできないもの(アガンベン『身体の使用』読書メモ)

自らの生のスタイルに住まうことのくつろぎ:自分のものとして所有することのできないもの(アガンベン『身体の使用』読書メモ)

言葉がうまくでてこない。どんなに言い換えてみても、自分の言葉が自分の表現したいものを言い表してしないように感じる。そのような悪戦苦闘は言葉を大切に生きている者であれば誰もが感じることだろう。

アガンベンは、《言語を操って自分のものにすることを務めとしている者たちーー詩人ーー》は《言語を自分のものにすることを追い求めているが、それは同じ程度に自分のものでなくすことでもある》と語っている。言語を自分

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『マネジメントの神話』(マシュー・スチュワート

『マネジメントの神話』(マシュー・スチュワート

コンサルティング・ファームが提供している価値は虚構なのか。この問いを考えたい場合は、マシュー・スチュワートの『マネジメントの神話』を読むと良い。マシュー・スチュワートは、オックスフォード大学で哲学の博士号を取得したあと、コンサルティング・ファームに転身した、変わったキャリアをもっている。

それゆえに、「経営(マネジメント)」や「戦略」といった言葉に違った光を投げかけていることが面白い。スチュワー

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『戦略の要諦』(リチャード・P・ルメルト)

『戦略の要諦』(リチャード・P・ルメルト)

ビジネスの世界では「戦略」という言葉が好きな人が多い。しかしほとんどの場合、「戦略」という言葉を使うことで何を言いたいのかは異なっていることがある。本書は「戦略」とは何であるかを語ると同時に、いや、それ以上に「戦略」とは何ではないかを語っている点が興味深い。

戦略はゴール(目標)設定ではない 組織の戦略を立てようと集まった面々が、まずは5年後に達成するゴールを決めようと対話している姿は、誰もが創

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『身体の使用』「インテルメッツォⅠ」(ジョルジョ・アガンベン)

『身体の使用』「インテルメッツォⅠ」(ジョルジョ・アガンベン)

ジョルジョ・アガンベンの主著『身体の使用』で語られた驚くべき概念である「〈生〉のスタイル」は、ミシェル・フーコーの思考を一つの源泉としている。アガンベンは、「生存の美学」に関するフーコーとアドの対立を描写することをもって「インテルメッツォⅠ」という章をはじめている。アガンベンによれば、両者の違いは「主体は主体の生活と行動にたいして超越したところに位置している」というありふれた考え方からの距離にある

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資本主義の歴史(ユルゲン・コッカ)

資本主義の歴史(ユルゲン・コッカ)

ユルゲン・コッカは、1941年生まれのドイツ人であり、ドイツ近現代史の大家である。『資本主義の歴史』は、中国とアラビアを前史とした商業資本主義から、現代の金融資本主義まで、「資本主義の通史」をコンパクトにまとめている名著である。読後、印象に残ったのは「資本主義という概念は、相違を表す言葉として始まった」という命題と、「資本主義に代わるオルタナティブないが、資本主義には多様なバージョンがありうる」と

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