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知識が見せてくれるもの

結婚してから、劇的にYouTubeを見る時間が増えた。

独身時代、テレビやラジオに費やしていた時間がごっそりYouTubeになったからだ。

何を今更と思われるかもしれないが、昨年までは本当に見る機会がなかったのだ。

見るとすればミュージックビデオや作業用BGM・美術館の予告・大学が高校生を対象にした夏休みに行う模擬講義…というくらいで、いわゆる「YouTuber」と呼ばれる人の動画は見なかったので知識もほとんどなかった。

いや、今も人並み以下であると思う。見る時間は増えたけれど、見るチャンネルはだいたい3つで偏っているからだ。

1人の時ではなく、旦那さんと一緒にご飯を食べている時に見ることがほとんどだ。私はYouTubeを見る時間が増え、旦那さんはテレビを見る時間が増えた。

これが今のスタンダードになってきている。

・・・

まだ独身だった頃、今の旦那さんに教えてもらったYouTuberがいた。私は全く知らなかったが、いくつか一緒に動画を見ているうちに、大体名前と顔は覚えてきた。

でも私の中の知名度はその程度で、職場の同僚に新しく覚えたYouTuberとして話をしたら「え、知らなかったんですか?めちゃくちゃ有名ですよ!もうテレビにも広告とかにも出てるし。」と言われた。

そう言われても、知らんもんは知らんし、見たことないものは見たことがない。

それは一部のYouTube好きの界隈で有名なのだろう。

…と思っていたのだが、それからと言うもの電車の中吊り・ネットニュース・SNS広告でも、彼らの顔や名前を見るようになった。

あまりにもタイミングよく露出が増えたようにも思えたが、もちろんこれは偶然ではない。視界に入っていたとしても知らない人・興味がない物が見えなかったのだと思っている。

・・・

知らないものは見えない。
私は以前からこの現象についてよく考える。

心理学用語では「ストコーマ」というのだが、自分の知っている情報や知りたい情報以外が見えない心理的盲点のことをいう。

小さいころに覚えたての言葉が、急に家族の会話やテレビから聞こえてくる現象の正体がこのストコーマだ。

たとえば、リュックを買おうか悩んでいる時は、街中で持っている人のリュックが途端に気になるのとも類似現象だ。

本当に見えない・聞こえないわけではなくて、見え聞こえるのに脳まで伝達がされずに、認識できていない・記憶されない状態らしい。

ましてや今は情報があふれかえっている。

すべての情報を受け取るなんてことはできるわけがなく、人々は知らないうちに情報を取捨選択しているのだ。

見たいものしか見えない。
見たいようにしか見えない。

だから、BUMP OF CHICKENの歌ではないけれど…
見えないものを見ようとするなら、必要なのは望遠鏡ではない。


知識。それだけ。


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