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共感性ガールの魔法

以前、共感性が高すぎる女性と仕事をしていた。

彼女はお話好きで、いろんな話をしてくれる。
そして、いろんな話を聞いてはくれるが、何を答えてもいつのまにか彼女の話に変わっているという、魔法の持ち主だった。

共感性というのは、こと女社会の中では必要な特性である。「そうだね」「たしかに」「わかるー」というのは、文字にすると感情や意味を持たない言葉のように見えるが、用法・用量を守り、適度な感情を乗せれば、相手を満足させることができるキラーワードだ。

しかし、共感性が高いというのは単にこれらの言葉を乱用するだけではない。時として、相手の感情までコントロールしてしまうことがあるのだ。

・・・

たとえば、旅先で美味しい団子を食べた話をする。すると、「いいな、美味しそうだね。私も食べたい。どこで売ってるの。いいなー。今日お団子買って帰ろうかな。」と話している本人の熱量をはるかに超えてきたり。

また、「いつ・どこへ・誰と行ったのか」「写真はないのか」という詳細な情報を根掘り葉掘り聞いてくれる。このターンに入ると、彼女の話題になるのは時間の問題だ。
「私もその日出掛けたんだけどね、〜。」「私もそこへ行ったことあるんだけど、私が行った時はね〜。」「美味しそうだねー!私もこんなお団子を〇〇で食べたんだけど、その旅行中にね〜。」と。

まぁ、ここまでの他愛もない会話の中でなら、気にすることはないのだが、危険なのは感情を左右させられる可能性があることだ。

ある日、同僚がその共感性ガールに、仕事の上での悩み…というか上司への不満を吐露している会話を聞いた。なんとなく盗み聞きしている限り、同僚もそこまで深刻というわけでもなく、まぁ通常だったら話だけ聞いてもらい程度の愚痴だったと思う。

聞き手であった共感性ガールは、持ち前の共感性で、「それは辛かったね」「〇〇(上司)もこうしてくれればいいのにね」等、はじめのうちは一般的な相槌をしていたのだが、魔法を使うやいなや様子が変わってきた。

「そういえば、私も先週こんなこと言われて…」と、共通の上司への不満を言い合い、「だから私は、あなたの気持ちが分かる」と煽るうちに、お互いの怒りがエスカレートしていき、はじめは穏やかだった同僚も徐々に熱を帯び始めたのだ。

仕舞には同僚が目を三角にし、「もう直接言ってきたほうがいいよ」という共感性ガールの一言で、同僚は席を立ち、上司の元へと向かっていった。

・・・

まず、共感をさせる事柄を話してから嘘をつくと、騙しやすいという話を最近教わった。むしろ、その手口で私もすっかり騙されたのだが。

だからこそ「騙し方」…としてこの方法を念頭に置くより、私の場合は「騙され方」として注意しておく必要があると思った。

共感の先には罠がある、かも。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。