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今日も味気のない世界へ

毎朝、同じ時間の電車に乗って出勤している。

同じ電車というだけでなく、私の住む街は始発駅なので、同じ車両の同じ席に座ることができる。

意外と「毎日見る顔」というものがない。

とはいえ、こんな時代なので私の出勤も週2〜3回で毎日ではないし、他の人だってそれは同様なので当たり前なことである。

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私が座る席は、7人掛け席の一番端である。

初めは7人掛け席のど真ん中にして、景色を楽しもうと思っていた。

でも、端に座った方が車窓の奥から流れる景色をより長く感じることができることに気づき、今ではほとんどの駅で開くドア側を背に、6両目の7人掛け席の端が私の特等席となった。

景色を楽しむとはいえ、2.3駅で乗客で車窓は遮られる。だからこそ、この2.3駅ぼーっと車窓を眺めるのが貴重な時間だ。

車窓から近い鉄橋やビルは速く、遠くに見えるマンションや空はゆっくり流れる。そんなチグハグな流れを感じるのもまた楽しい。

近くにあるものは目まぐるしく変わるのに、遠くのものはじっくりと、でも確実に変化し、時間をかけていつのまにか変わっていく。

それは、車窓からの景色ではなく、さまざまなことに言えるだろうな、と思いながら。少しおセンチな気持ちで出勤をするのだ。

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電車が進むと、車窓が見えなくなるだけでなく、チラッと見える景色がだんだんと「都会」になっていく。

まん丸くふんわりとした雲や、赤い屋根の家の三角などの遠くの景色すら見えないほど、車窓近くに高いビルや店舗付きのマンションが立ち並び、車窓から空が見えなくなるほど、見事なまでに四角いもので埋め尽くされる。

「あった方がいいんでしょ?」と言わんばかりの申し訳程度の緑がちらほら見えるが、それも一瞬で流されていく。

そんな社会で生きている。

今日もそんな味気のない世界へ。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。