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冷静と情熱の間に居続けること

アマビエチャレンジをした。

甘海老ではない。アマビエをご存知だろうか。

「私は海中に住むアマビエと申す者なり。
疫病が流行した際は私の姿を描き、人々に見せよ。」

江戸時代に現れたと言われるこの妖怪は今、ネット上で流行っているらしいが、このアマビエを私は知らなかった。

今のこのご時世の感染症に打ち勝つための対策として、アマビエの言葉を受け取り、この絵を描く人が多いという。

姪っ子に頼まれ、描くことにした。

・・・

先ずは素描。
ちょっとマトリョーシカ風にしようかと。

筆入れをしてから、色入れ。
家中にある画材、クレヨン、クレパス、色鉛筆、絵の具、ポスカ、スタンプ台等、着色できる様々な物をかき集めた。

この時点では何を使って色入れするかは、未だ決めていなかった。

けれど、私のテーマである泡絵具が、海から来たアマビエにピッタリなので、背景は泡絵具にすることにした。

泡絵具は、弾ける瞬間に絵の具が散る。

アマビエ様に飛び散った絵具がかかることの無いように気をつければいいのだが、泡の弾けまでは予測ができないので、絵具を弾くよう油分の多いクレパスを基本として着色。

絵具に食器用洗剤を混ぜ、泡も作って乗せていく。このCG全盛期の時代に、こんな原始的な方法で泡を表現することに興奮を覚える。

加工をかければ一瞬で出来る。
でも…やっぱり本物には敵わない。

クレパスで守られていることを良いことに、アマビエ様を泡塗れに。でも、海の妖怪なので、きっとへっちゃら。

とりあえず完成。

このままでも良かったけれど、なんかちょっと物足りなかった。ピンクや黄色の泡も小さく乗せようかと思ったが、生憎絵具が足りなかった。

そこで、やはり祈りを込めなくては…と思い、墨汁で文字入れ。

うん、これが大失敗。
文字入れなきゃ良かった。バランスも悪く、せめて練習してから書かけばよかった…と、後悔しても遅い。

PCで作っていれば、簡単に取消をすることもできるが、そうはいかないのがこのアナログ手法の欠点である。

認めよう。
手を動かし始めたらドンドン楽しくなってしまって、調子に乗ってしまったことを。

姪っ子は喜んでくれたので、これはこれで良いということにするが、創作活動としては良い勉強になる失敗だ。

・・・

淡々と進めているように見えるが、私は着手がすこぶる遅い。

実際、素描を描くまでに2日かかっている。
どのテイストにしようか、写実的にするかポップにするか。どんなイメージで描こうか。

アマビエに関しては、長い髪、エラのような耳、長いくちばし、首から下の鱗、足は3本といった特徴が決められていたので、考えなければならない要素が少なく、2日でも早かった方だ。

そのくせに、手を動かし始めると波に乗り、頭では考えてつかなかったアイデアが出てくる。筆も進むし、ある程度までは納得しながら進めることができる。

今回も、直前までアマビエの着色方法を決めていなかった。泡を弾かせるためにクレヨンよりも油分の多いクレパス(オイルパステル)にしようとまでは思ったものの、塗ったところでクレパスのカスで凹凸が目立つ。

そこでティッシュや指で擦るフロッタージュ(擦りだし)をし、ぼかしつつもマットに仕上げることができた。

でもマットすぎても鱗の感が出ない。少しキラキラさせたいなと思いながら、指で擦っていると自分の爪が目に入った。

そうか、マニュキュアだ。
ちょうどネイルにラメを使っていたので、鱗のいくつかにラメを塗る。

すごくいい。
どうせなら長い髪にも…と部分ごとにラメを塗った。

ここで留めておけば良かったのだ。

「調子に乗るな」という言葉を聞く。
しかし、創作活動においては、乗れる調子には乗ったほうがいい。

調子に乗りすぎて手を加えて、「お、いいぞ」が続くと思う結果が続くと、冷静な判断ができなくなる。過信してその波に乗り続けると、今回のように必ず「やりすぎた」と納得できない作品になるのだ。

・・・

創作活動をする心持ちとして、冷静と情熱の間に留まり続けることがいかに大切か。

これは絵だけではなく、小説や絵本・彫刻などの芸術活動の全てにおいて当てはまることではないだろうか。

情熱的な勢いだけで作品作りができるのは、才能のある人だけだ。

あいにく私はその部類には属していないので、いかに手を加えて、失敗を繰り返し、経験を積みながら、作品作りの際の判断材料として活かしていくほか、仕方がない。

・・・

今回は様々な反省点もある。
課題も見つかった。
もっともっとデッサンもしながら、画力をつけなければならない。

でも、何より楽しかったな…。
久々の作品作りは、実りが多いものでした。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。