見出し画像

素話の魅力

またこの時期がやってきた。
年の瀬になると年賀状の作成とともに、私には素話(すばなし)を覚えるという使命があるのだ。素話は、簡単に言えば語り聞かせ。絵本などを持たずにお話をすることである。

帰省した時、姪っ子たちを寝かしつけるのは、いつからか私の役目となっていた。最初のうちはいくつか絵本を持っていき、子どもたち選ばせていた。帰省のたびに新しい絵本を調達して持って行ったのだが、ここ最近は子どもたちのリクエストにより、7年前に披露した「エパミナンダス」というお話を素話で聞かせることが決まりごとのようになってきた。

この「エパミナンダス」というお話は、子どもが楽しめる要素が詰まっている。大人が読んでもちょっと笑える。そして、このお話の特徴は伏線がとても分かり易く、子どもたち自身が想像力を働かせ、一歩先を読むことで楽しさが倍増するお話である。

私もこのお話が好きなので、子どもたちも気に入ってくれたことが嬉しかったのだが、単にお話が好きというだけでなく「素話」が気に入っているようにも思える。

+++

素話の魅力はなんだろうか。
語り手としては一度お話を覚え、内容を理解してから、自分の声と言葉でお話しする必要があるため、絵本等とは手軽さが違う。だが、子どもの表情を見ながらお話を進めることが出来るので、それこそが素話の良さであり、子どもたちが喜ぶ所以なのだろう。

また素話は、絵や音楽等がないので、子どもたちは言葉だけで想像し、世界を広げる必要がある。だからこそ、より集中してお話を聞いてくれる。子どもたちにとっても、自由な想像ができるので、自分なりの解釈でお話を広げることが出来るのだ。

幼稚園教諭をしていた頃も、様々なお話の素話をしていた。幼稚園や保育園では、やはり絵本や紙芝居の読み聞かせが主流ではあるが、小さい絵本だと「絵本が見えない」と言われて話を中断することになったり、泣いてる子がいれば抱っこして手がふさがっていたり…ということもあったので、いつでも話せる素話を用意していた。

もちろん園でも活用できるのだが、実は家庭で素話をしてあげることが、子どもにとっても有効なのではないかと。思い返せば、日本の昔話などは絵本で読んだものは少なく、大抵のお話は親や祖父母などが語り聞かせてくれていた。あれが嬉しかったなぁ…と。

+++

幼稚園年中・小学3年だった頃に読んであげた姪っ子たちは、今や小学校5年・中学3年。それでも「『エパミナンダス』のお話して!」と言うくらい対象年齢も幅広く、滑り知らずの作品なので、是非。

以上、年賀状を書くことからの逃避でした。


今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。