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ウクライナ戦争と日本・海外不動産市況の影響

ロシアがウクライナに戦争を仕掛けてから3週間が経過しようとしている。ロシアの思惑以上に侵攻に時間がかかっていると言われる中、西側諸国からの制裁は日に日に増している。この動きが日本・海外不動産市況にどのように及ぶのだろうか。

最初に西側からの制裁状況について確認をしたい。制裁対象は、国としてのロシアを超えてプーチンに親しいといわれる「オリガルヒ(新興財閥)」の資産凍結などSecondary Sanctionを強化するなど、その制裁措置は広範囲に渡ってきた。

SWIFTからの排除は実質的に国際送金をさせないということであり、人民元による国際決済システム「CIPS」を使えば抜け穴があるといわれているが、上述のSecondary Sanctionを強化している現状においては中国も積極的にロシアの送金の手助けをするにはリスクがある。当面ロシア⇔他国の海外送金は活性化しないと見込める。

アブラモビッチ(ロシア)も不動産投資家


不動産に関していえば、資産家の資産ポートフォリオの多数を不動産が占めている(所有している)ように、ロシアの財閥やオーナー個人も多数の不動産をヨーロッパとりわけイギリス・ロンドンを中心として所有している。プレミアリーグのチェルシーのオーナーとして有名なアブラモビッチもその一人。ロンドンで複数の高級マンションを所有している。

そのような中で、イギリスは親プーチン派が所有する不動産の国庫への没収も視野に入れているとのことで、不動産市場においては影響が極めて大きい。動産であれば持ち運びができるが、不動産を持っていくことはできないため、その国が押収するとなった場合に所有者にとって守る手立ては、ない。

海外で影響を受ける不動産

不動産市場に与えるのであれば、具体的にどのエリアが影響に影響を及ぼすのだろうか。まず、ロシア人が好んで投資をしている国や種別がもっとも市場の影響を受けると考えられる。また、新興国などで実質的な所有者が不明のまま(信託などを介しての間接所有など)で投資ができる国に関しても実質的な支配者のトレースがプロセスに加わるとなると影響を及ぼすだろう。

1,ロンドン
イギリスは外国人や法人が不動産を購入することができる、かつバミューダやケイマンといったタックスヘイブンの英領諸島から投資をするといったスキームもよくあった。実際チェルシーのアブラモビッチオーナーもロンドンで高額な不動産を所有しているということで、ロンドン不動産の売買においてはロシア人も多く所有・投資していると見られる。今後の取引では本当の意味での本人確認が必要になり、取引の停滞が想像できる。

2,ベトナム(中部〜北部)
ベトナムは社会主義国であるということもあり、ロシアとの関係も親しい。ビーチリゾートにおいてはロシア人が数多くバカンスに訪れ、現地ではロシア語のメニュー表記をよく見かける。ベトナムにおいてはコンドミニアムのみ所有することができるが、ベトナムで法人を設立した上での所有ということもできるため、大型の不動産を所有することも可能ではある。ロシア人がどの程度投資をしているかどうかは不明だが、投資先に選ばれている可能性はある。

3,戦争(掌握)が起こりやすそうなエリア
最後に、今回ウクライナ戦争によって、地政学リスクにより注意を払うことになった。そのため侵略の可能性がある国に関しての不動産投資は冷え込む可能性が高い。となるとロシアに限らず、日本からみると中国や北朝鮮の脅威もある。その場合には台湾、香港がもっとも影響を受けるのではないかと考えている。香港は特に中国政府の掌握方法は強まっているため、不動産取引や外国人所有者への規制強化も考えられるため不透明度は高い。

日本不動産への影響は?

一方で日本の不動産に関しては限定的とみていい。「限定」核戦争になるなど第三次大戦へ向かいそうな事態の深刻化を除いて、欧米からの安定したキャピタルマネーの流入と国内投資家の安定した投資意欲、そしてそれを支える低金利の現状において問題になることは少ないだろう。

不動産に関して言うならば、ロシアやロシア経済への依存度が高い国の経済への悪影響からくる不動産市況の悪化という流れに注意をしておこう。いづれにしても限定的だ。



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