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電脳病毒 #38_228

 徐は、工業技術系の専門学校へ進学する。地域における住民委員会の意向を受けたものだ。この土地の工業化促進を促すため人材育成を目的とした。徐は暫く故郷を離れることになる。
 故郷から遠く離れた工業港湾都市。そこで徐は初めて英語に触れる。工業技術を習得するための海外製工作機械の便覧《マニュアル》は英語のままだ。この国の言語に翻訳された便覧《マニュアル》はない。この国の外国語講師の発音は本国的《ネイティブ》にはほど遠い。あの短波広播《ラジオ》を教師代わりに、徐は英語を身につけていく。
 一年ほど経つ。徐は海外短波放送をそれなりに理解していく。海外で報じられるこの国の内情も精通。殆どが国内報紙《新聞》で報道されはいない内容だ。
 大家族主義が、まかり通るこの国。単位という生活共同体で社会が形成されている。単位は全ての人民に物資配給、福利厚生、教育など全てを司る。


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