電脳病毒 #16_206
「考えさせてください」と劉。
「連絡してくれ」背広は劉に名刺を残していく。
四 探索
劉は徐とのやりとりを思い起こす。犯行計画を練っていたとも知らず。
流行している宏《マクロ》病毒は、応用軟件《アプリケーションソフト》が持つ宏《マクロ》言語で記述され宏《マクロ》機能を逆手にとる。これまでの病毒は程序文件《プログラムファイル》に感染し、程序の実行で文件感染や破壊活動を行う。宏《マクロ》病毒は文字処理《ワープロ》や表計算の文書文件《ファイル》に感染し、文件や硬盤《ハードディスク》だけでなく硬件《ハードウエア》そのものを破壊する。それがこれまでの病毒より強力な理由だ。これまでの病毒は一万種あるが、それに加え宏《マクロ》病毒が増えている。宏《マクロ》を扱える者なら、宏《マクロ》病毒を元に変種を作ることも容易だ。これまでの病毒は機種に依存したが、宏《マクロ》病毒は宏《マクロ》機能を利用する応用軟件《アプリケーションソフト》なら機種に関係なく感染する。