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電脳病毒 #9_199-200

三 電脳電影学院
 劉が電脳電影学院に所属していた、あの頃。学院は旧来の電影《映画》制作に最新の電脳画刊《コンピュータグラフィックス》技術を応用する目的で設立された。先端文化施設とされた。電脳画刊の基礎技術を確立し、これまで美国《アメリカ合衆国》の下請けでしかなかったアニメーターを、最終的には電脳画刊創造者《クリエーター》に養成。電脳画刊化の進む美国の電影産業へ追随しようという目論見だった。
 将来的に虚擬現実《バーチャルリアリティー》への展開も計画されていた。国際標準化《グローバリゼーション》を視野に入れた知識型経済への転換も視野にあった。それも、この国が得意とする人海戦術よるものである。
 だが、本当の目的は電影による国家主義《ナショナリズム》の鼓舞である。暗示《ヒント》の一つとなったのは、美国のある電脳画刊による動画片《アニメーション》だ。おもちゃのカウボーイや宇宙飛行士や兵隊が、戦闘的な雰囲気を醸し出していたあの電影。この国も美国に倣い、どこが敵国であるのかを子供達を手始めに偏見を叩き込んでいこうとした。それは、美国と同様に反日感情の醸成をも暗示していた。


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