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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #54_245

 奈落から這い上がり、薫陶は周りを見回す。作業台の周りに数人の姿。長髪の若者が薫陶に近づいて来る。
「予定が変わった。きみは数日ここにいて手伝ってほしい。数据はもってきただろう?」
「ええ」薫陶は頷く。大型背包を下ろし光盤を手渡す。
「こっちへ」
 その男の後ろを薫陶は黙ってついていく。
作業台の上。電脳病毒の包装詰めの作業が行われている。ここは、徐のつくった秘密本部《アジト》の一つだ。地鉄の廃棄路線の上の軟件工場。長細い月台全体が作業場になっている。電源は、この横を走る地鉄の側面鉄軌《サイドレール》電源からの盗電だ。線路を挟む反対の月台には、電脳病毒の包装が山積みされている。
 男は月台の先端まで行き、階段を下りていく。そこは駅員の休憩所にあたる所なのだが。今は電脳機器で一杯になっている。


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