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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #114_294

 薫陶は、それが何をする道具なのか知らない。一息つく。薫陶は自転車を再び漕ぎだす。何故か、あのサーフボードが気になってくる。
 薫陶は、コンクリートの土手通りを急ぐ。薫陶はサドルから腰を浮かす。自転車のタイヤが、コンクリートの継ぎ目を越えるたびに。その時、高くなった視線を海岸に移す。土手の向こうの海原。朝早くから波乗りをする若者達。波間に浮き沈みしている。
 なるほどと薫陶は頷く。塵捨て場で見たサーフボード。同じようなものが、三角波の間から波を受け宙に突き上がる。若者達は波に翻弄されながら、両手でバランスを取る。サーフボードを水面に押しつけ。薫陶は、サーフボードの役割を理解する。
 受け持ち地区の配達をそそくさと終え、薫陶は土手通りを引き返す。収集車が来ないうちに、サーフボードを持って帰るつもりで。


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