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【短編選集】‡3 電脳病毒 #127_306

十七 新聞店住み込みスパイ
 同級生の彼女。静琉という名だ。文章を書くことを趣味としている。誰彼を問わず、自分の書いた小説を披露していく。
「新聞店住み込みスパイ。米軍キャンプ地に近い新聞配達所に、留学生の住み込みアルバイトがやってきた。彼の名はマルケサスといい、キューバからきた若者である。彼の本来の目的は留学にあるのではなく、キャンプ内への新聞配達や集金を通じ、米軍キャンプの情報収集活動を行うことにあった。マルケサスは先輩にあたる中国人留学生の孫の指導を受け、新聞配達兼スパイとして成長していく。みたいな・・・」
 薫陶は、アイス珈琲をかき混ぜながら、黙っている。静琉は読み終えると、ストローの袋を千切りストローの先を口にくわえる。ストローに軽く息を吹き込むと、袋が薫陶に向かって飛んでいく。薫陶は顔を上げる。静琉はからかうように笑っている。


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