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【短編選集】‡3 電脳病毒 #131_310

「ありがとうございます。お釣りです」
 釣銭をレジに放り込むと、男は作業台に戻る。薫陶は、店内に飾られたボードを見渡している。話の切っ掛けに時間を稼ごうと。だが、男は黙々と作業を続ける。ふと男が顔を上げる。用が済んだら早く帰れとでもいうように。話かける間もなく、薫陶は店を出る。
 外に出る。潮風の生温い熱気が街に流れ出している。故郷とは少し違っている。煤煙の少ない、新鮮な潮の香りというか。
 新聞店に戻り、薫陶は食堂へ。店主の高橋と佐田が夕食をとっている。
「集金、お疲れさん。代わってやったんだってな」高橋は佐田を横目で睨んでいる。
「社長、そういうことじゃ。こいつに勉強させたいと」と佐田。
「勉強?何の?」
「こいつ、サーフィン、興味あるみたいで。うまいことコネクションとれたのか?」
「いえ、その・・・」


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