【短編選集】‡3 電脳病毒 #126_305
「この街、地味ではあったが文化的な懐かしい街づくりだった。その街並みを破棄、捨て去ったのは、デベロッパー。それを擁護した監督官庁だ。駅近にタワーマンションという構図。聳え立つ高い壁でしかない」
「皮肉ですね。それが水没したと」
「ああ。場所を間違えている。湾沿いのウォーターフロント。そこなら誰も住んでいない。積み出し倉庫や工場しかない。そんな所だったら、いくら開発しても構わない。しかし、こんな駅前の都市開発。利便性からみれば当然と言えば、当然だが。爆発的、暴力的ともいえる建築ラッシュ。情けない」
「情けない?」
「もっと美しい、開発意識はなかったか?そう言うこと」
「そうですね」
「ダンスは終わった。引き上げるとするか」
「さよなら」
「また逢おう」