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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #55_246

 薫陶は部屋に入る。台式計算机《デスクトップパソコン》に向かっていた数人が顔を上げる。
「ここへ」男は一台の台式計算机を指す。そして、薫陶から受け取った光盤《CD-ROM》を装填する。 薫陶は椅子に掛け、顕示器《ディスプレイ》を覗く。それは、電脳病毒の蔓延状況を示した図表《グラフ》だ。販売した包装の地址《アドレス》と、それの蔓延先が地図情報として表示されている。
「なるほど、こういう状況か。きみには販売先、浸透先にパッチ程序《プログラム》を配布するように指示されている」
「パッチって、どんな?」
 男はある文件を指すと、薫陶に暗号解除鍵を伝える。
「これからが本番だ。網絡《ネットワーク》が一つの意識を持つことになる」
「意識って?」
「網絡《ネットワーク》が有機的に結びつき、ひとつの生命体になる」


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