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電脳病毒 #39_229

 人は、単位で一生を終える。単位で生まれ育ち学業を修め、就職、結婚を経て老後から死へ。単位と単位をつなぐものが媒介《メディア》だ。媒介《メディア》は政府や行政批判は制限され、党の広報誌でしかない。党の意向にそぐわない記事は一切掲載されない。これは日常茶飯事だ。だが、庶民は気づいてはいない。
 ある晩、徐の故郷の名が放送から報じられる。徐は注意深く聴く。あの填埋場が海外の環境調査機関の査察が入ったと。働かされていた労改の囚人が、填埋場の内情を海外報道機関に知らせたことが発端だ。鉛中毒の実体が調査から明らかにされた。政府はその実体を把握しながら、塵埃の輸入を停止していない。作業にあたった地域住民はじめ、労改の囚人の多くが鉛中毒の犠牲となった。と、海外報道は伝えている。
 処理作業が始まり数年、都市部でも環境汚染が進む。酸性雨の原因とされる二酸化硫黄濃度が、国際基準の二倍に達している。


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