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【短編選集】‡3 電脳病毒 #129_308

「なぜ新聞配達所が舞台?地味な仕事だし、ワクワクするようなものは何もないです」
「ワクワク。そうだよね。スパイものらしく」静琉は腕を組む。

 午後の授業を早々に切り上げ、薫陶は配達所へ。玄関前に並べられた自転車。前籠には、夕刊の束が積み込まれている。
「帰りました」
「夕刊、用意しておいたから」佐田は、朝刊の折り込みを揃えている。
「すみません。いつも」
 薫陶はジャンパーを羽織る。背中に新聞名のロゴ。
「そうだ。配達帰り、波波屋へ集金に行ってこいよ。サーフィンのことでも聞いてくればいい」佐田は薫陶に集金用のウエストポーチを放り投げる。
「わかりました」
「波波屋、場所は知ってるよな」


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