風帆美千琉

初めまして、風帆美千琉です。8年ほど海外と日本を往来して、日々の出来事をブログに綴るう…

風帆美千琉

初めまして、風帆美千琉です。8年ほど海外と日本を往来して、日々の出来事をブログに綴るうちに小説を書くようになりました。エブリスタ、アルファポリス、カクヨムではマスカレードで登録しています。 2024年8月「翼を狩る者と運命の乙女」が書籍化されます。

最近の記事

二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第三話 メルシア(4-4)

 絶対に私はお父様とお母さまの子供だ。  目の前の男に尋ねれば、ひどい陰口だと噂を一蹴してくれるはず。それでも、メルシアは魔術師のフードに隠れた顔を見ることができず、足元に視線を落としたまま告げた。 「お父さまは私の目が邪眼の目だっておっしゃったわ。赤い瞳が恐ろしいって」  魔術師が身じろぐ気配が伝わり、歯ぎしりが聞こえた。  メルシアはハッとして魔術師の顔を見上げたが、館の方を睨み据えた魔術師の表情が怖くなり、また一歩後ろに下がる。  それに気が付いた魔術師が、かろうじ

    • 二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第三話 メルシア(3-4)

       パシッと乾いた音がして、頬を抑えたメルシアが床に倒れた。 その瞬間、カップの中の紅茶がぶくぶくと泡立ちながら沸騰し、悲鳴とともに婦人たちの手から落ちたカップが床で割れる音が重なった。 「お前はなぜそんな禍々しい魔法ばかりを使うんだ。メルシア、白魔術は人に役立てるものだ。怒りや復讐などに使ってはならん」  メルシアは、炎が燃えているような赤い瞳でヘンリーを睨んだ。  カリーナが慌てて駆け寄り、両者の間に入って仲裁をしようとしたが、ヘンリーは吐き捨てるように言った。 「な

      • 二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第三話 メルシア(2-4)

        「メルシア、よくお聞きなさい。たとえ王と王妃にお世継ぎのミレーネさまがいらしたとしても、まだ他に子供はいないのだから、あなたは上位継承権をもっているに変わりはありません。もし、ミレーネさまに何かあったら……」 「やっぱり、あの侍女たちの言ったことは本当だったのね。クイーンになるのはミレーネで、私はお父様と同じでスペアってこと?」 「そこまでだ!」  男の低い怒り声が瀟洒な部屋にこだました。  軍服を着た王弟のヘンリーが、ずかずかと部屋に入ってきて、ミレーネの前に立った。

        • 二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第三話 メルシア(1-4)

           王宮からほど近い侯爵家に停まった馬車の扉を召使が開けると、その手も借りずにメルシアは外に飛び出した。  普段は取り澄ました貴婦人のように、ツンと顎をあげ、立ち振る舞いも指先にまで神経を行きわたらせているのに、今は年相応の癇癪を起した少女でしかない。   慌ててドアを開いた召使いの横をすり抜けて屋敷の中に駆け込んでいく。 ドレスの裾を両手でたくし上げたメルシアは、大理石の床にヒールの音が響くのも構わず長い廊下を駆け抜けて、乱れた髪を直すこともなくティールームのドアをノックもな

        二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第三話 メルシア(4-4)

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第二話 二人のプリンセス(2-2)

           メルシアが蜘蛛の巣に手を翳して大きくなれと呪文を唱え、昆虫ごと蜘蛛の巣を網のように巨大化させると、侍女たちを捕らえるように命令する。  固まってひそひそ話をしていた侍女たちは、まさしく一網打尽にされてしまい、悲鳴をあげながら大きな昆虫やクモと一緒に網の下でもがいた。 「お許しください。メルシアさま」 「ひ~っ。大きな蜘蛛が襲いに来るわ。助けて!」  メルシアがいい気味だと言いながら、高笑いする。人間の頭ほどになった蜘蛛が糸を吐いて、侍女たちをぐるぐる巻きにするのを見たア

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第二話 二人のプリンセス(2-2)

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第二話 二人のプリンセス (1-2)

           東西に広がる大陸を二つに分断するように南北に走る山脈の南側には、いくつかの王国がある。  イゾラデ王国はその中でも最も南にあり、気候も温暖で農耕に適し、コバルトブルーの海からも海の幸を得られる恵まれた土地だ。  一年中咲き乱れる花々から作られる香水はこの国の特産品であり、その他にも美術品やデザイン性の高い服飾などが有名で、他国から商品を買い付けにくる商人たちで賑わっていた。  そんなに恵まれたイゾラデ王国を、自国の領土下に置きたいと進軍してきた国もあるが、いまだに独立した王

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第二話 二人のプリンセス (1-2)

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第一話 プロローグ

          あらすじ イゾルデ王国の王族は、精霊の加護を受け白魔術を使える者が多い。 国王の娘ミレーネと王弟の娘メルシアも術者だが、メルシアは妖精の取り替えっ子との噂がある。何かとミレーネと比較されるうちに心が捻じ曲がって黒魔術を操る魔女の仲間になり、黒魔女狩りにあう。 一方王女としての品格を身に着けたミレーネは、隣国の皇太子ルキウスの婚約者を決める舞踏会に招かれ、ルキウスに見初められる。ところがミレーネだけが幸せになるのが許せないメルシアが、夜中に襲撃。ミレーネは重症を負う。隠れ家で治

          二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第一話 プロローグ

          レド🐰が~乱歩🐾

           これは、海外赴任していたダンと、ダンの赴任先と日本を往復していたレドのお話。住んでいる場所をほっこりアニマル村、ㇾド🐰とダン🐇を耳長族の動物に喩えたエッセイが始まります。二人の楽しい生活や思いがけないできごとを覗いてみてくださいね。 1 ダン、登山に憧れる  ダンは、最近一人キャンプに興味を持ったようで、ランプやテントなどを揃え始めました。そして山に関する雑誌を何冊も買って、今日もリビングでコースなどを調べています。  レドはそれを尻目に、ダイニングテーブルで締め切りの

          レド🐰が~乱歩🐾

          ドライフラワーのセットを購入したので、アレンジしてみました。 花の入れ替えのため60本で、すごくお値打ちだったのも嬉いし、色々な形の葉が入っていたから、アレンジしやすかったです😆 車輪に絡めたナッツもかわいいでしょ? 飾ったら空間が華やぎました🤩🎶

          ドライフラワーのセットを購入したので、アレンジしてみました。 花の入れ替えのため60本で、すごくお値打ちだったのも嬉いし、色々な形の葉が入っていたから、アレンジしやすかったです😆 車輪に絡めたナッツもかわいいでしょ? 飾ったら空間が華やぎました🤩🎶

          デジャヴュを感じた街

          #どこでも住めるとしたら 「デジャヴュを感じた街」ー タイトルを見た方は、だいたい三通りの意見に分かれると思います。 1・大袈裟! どっかで写真でも見て、行ったことがあるって思い込んだんじゃないの? 2・私も感じたことがある。でも誰かに言うと頭が変なんじゃないかと思われるから言わない。 3・現実離れしすぎ。盛ってるね。この人(笑)  現実主義の私としては、自分が体験しなかったら1番の意見に賛成したんじゃないかと思います。  じゃあ、どこで既視感を感じたの? もったいぶらな

          デジャヴュを感じた街