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企業の使命は「企業価値創出」から「社会価値創出」へ――すべての日本企業はソーシャルビジネス企業になる

ご覧いただきありがとうございます。竹位和也です。

今回は #2020年代の未来予想図 というお題について、かねてから思っていたことを、できるだけ平易に書いていきたいと思います。

私については「自己紹介&noteで書くこと」をご覧下さい、よろしくお願いしますm(_ _)m

1.これまでの社会の考え方

これまで私たちは多くの利益を享受してきました。世界第3位のGDP(少し前までアメリカに次ぐ2位)を誇り、乳幼児死亡率はとても低く、平均寿命はとても高く、「一億総中流社会」という言葉すらありました。

なんだかヘンだなぁと思う日本の仕組みがあるなど、なんでも素晴らしいというわけではありませんが、それなりに豊かで、長く生きられて、安全で、なんだかんだ生きていきやすいと言っていいのではないかと思います。

ですが、ここにきて、そのよくできた仕組み、世の中が少しづつグラつくようになってきています。

その主因は労働力人口の減少にあると考えています。

労働力人口というのは労働に適した15歳以上の人を指しますが、この人たちは「労働をしてお金を稼ぎ、そのお金を使う」という、経済を支える大黒柱です。なのでこの人たちが減っていくと、世の中の製品やサービスの消費が減る → 企業の業績が伸び悩む → 労働者が雇われづらくなる → 更に製品やサービスの消費が減る・・・という悪循環を招きやすくなってしまいます。

なので、日本企業は海外での成長にシフトしながら、日本ではできるだけ売上を立てていこう、とがんばっている状況です。

「労働力人口の減少」というより「出生数の低下」のほうがより適切な原因じゃないの?という考え方もあると思います。事実、2019年の出生数は90万人を下回り、政府予想より2年早く出生数低下が進んでいるといわれています。

ここは日本が島国で、国をまたいだ人の移動がほとんどないため、自分たちの中でできることを考えがちだったりしますが、国外からの人の流入で労働力人口を増やすという選択肢は本来存在します。

そのため、「出生数の低下」ではなく、「労働力人口の減少」で世の中がグラつくようになってきた要因として挙げさせていただきました。

労働力人口が減っていくと、国内の生産や消費が減っていきますが、それによって税収も少なくなり、国の新たな課題に対応するための予算の確保が難しくなります。国は借金(国債発行)をして不足分を補っていますが、今やその利子と償還で23兆円を超えています。また、これまでに作ってきた仕組みや設備などをいきなりやめてしまうということも簡単ではないので、新しいことにお金を振り分けていくことが難しくなってきています(あとは高齢社会ゆえに社会保障費の負担が大きいというのもあります)。

更に、市場としての魅力が徐々に失われてきていることも押さえておく必要があります。競争を前提とした社会では、数が圧倒的に強い武器になるからです。

いくら優れた製品やサービスを作り出せる力があったとしても、それを選び消費する人が多くいなければいけません。マーケティングという競争活動を通じて、いかにしてより多くの消費者を囲い込むのか?というのが企業の大きな課題となります。

なぜならば、企業は企業価値向上が使命とされているからです。より多くの顧客を囲い込めれば売上や利益を高めることができるので、企業の価値はより高くなる、という考え方をとります。

その意味で、労働力人口が減り続けている日本は、市場としての魅力が徐々に失われているととらえる向きもあります。事実、日本企業であるソニーのPS4の発売は海外のほうが先になったり、東京モーターショー参画を見送る自動車メーカが相次いだりすることが起きています。

これまでの話をまとめると「労働力人口が減少している日本は、競争を前提とした社会において魅力を失いつつあり、日本社会を支える力も失いつつある」といえます。

2.これからの社会の考え方

この話をするにあたり、まず重要なポイントから述べていきます。

”企業価値創出からシフトし、社会価値創出を目指すべし"

なぜこのようなことを言っているのか、順を追って説明していきます。

最近、日本でもESG投資という考え方もよく聞かれるようになってきました。簡単に言うと、「Environment(環境)、Social(社会)、Government(企業統治)の3つの視点を踏まえた経営が行えない企業には投資しませんよ!」と投資家がハッキリ言っているのです。

また、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉もよく耳にします。2015年に国連で採択された2030年までに達成すべきとした目標であり、貧困の撲滅など、世界的にみられる問題を取り上げています。企業でもSDGsに関連する取り組みをするところもみられるようになってきました。

その前には、CSV(共通価値の創造)という考え方も取り上げられていました。CSVは、競争という概念をビジネス界に取り入れたことで知られるマイケル・ポーター教授が2011年に提唱したもので、「企業が社会価値を創出することを通じて、企業価値も向上させていく」という考え方です。

このように、これまで競争が念頭にあった企業のあり方が大きく見直されるようになってきていることが分かります。競争という概念をビジネス界に取り入れた張本人のポーターさんでさえ、社会価値に目を向けるべきだと言っているのです。

この章の冒頭で「企業価値創出から社会価値創出を目指すべし」と述べたのは、このような世の中の要請があるからです。

では、なぜそのような考え方が出てくるようになったかに触れていきます。

3.なぜ考え方が変わってきたのか?

世の中が社会価値に目を向けるようになってきた背景は案外軽視されがちだなと感じている部分でもあるので、少ししっかりと書いていきます。

よく言われるのは貧富の差。世界富豪トップ8人の資産は貧困層36億人分と同じであるといわれるように、貧富の差が激しく、乖離を続けているという事実はあります。ひどく痩せたアフリカの子供の写真を見たことのある方はいると思いますが、同じ人なのにこんなに境遇に違いがあっていいのか・・・という気持ちが生まれてきてもおかしくないでしょう。

貧富の差に準ずるものとして、健康、衛生、安全などの命にかかわるものから、教育、雇用などの生活の質を高めるものなどの機会の差もよく取り上げられます。学校に行かず働く子供も少なくないですし、衛生のよくない地域では乳幼児の死亡率も高いです。

これらのように、もっぱら不均衡をただすという文脈でSDGsやESG投資が取り上げられることが多いです。

このこと自体は決して悪いことではなく、それによってより多くの人により多くの機会や選択肢がもたらされ、より豊かな人生が送れるようになるのであれば、とても尊い取り組みだと思います。

ちなみに、SDGsやESG投資には「これまでの企業活動が社会や環境に負担や犠牲が伴ってきたので、それに配慮した取り組みが必要だよね」という説明もあり、これもまた重要な視点です。

で、ここからはあまり言われない話で、もっと深刻なことだと思っている内容となります。

a.人口の増加が今後も続き、食料や資源が慢性的に不足しやすくなる
b.発展途上国を中心に情勢が不安定になり、紛争やテロが起きやすくなる
c.上記1や2の影響を先進国も受け、これまでにない制限下で活動を余儀なくされる

aについては、日本は人口減少が進んでいますが、途上国を中心に人口が増え続けており、2050年には100億人に届くのではないかといわれています。今のままでは食料や資源の配分は難しくなり、価格の高騰を招くことが考えられます。フードロスへの取り組みも進んでいますが、活動範囲が限定されてしまうことと、この人口増加の前では、抜本的な対策にはなりえないと個人的には考えています。

bは、上記aで示した内容を受けて生じるトラブルです。安定して食料が供給できなくなると、人は不安を抱き、国などを非難するようになります。場合によっては暴動を招くことも考えられます。購買力のない発展途上国では特にそうなる可能性が高いといえます。これがさらに深刻になると、食料を奪うための紛争が起こったり、国家転覆を狙ったテロが起こったりして、かなり危険な状況に陥ることも考えられます。

cは、aやbにより先進国も対岸の火事ではいられないということです。今や世界の経済活動は先進国や発展途上国などの境目関係なく、極めて複雑な関係性の中で行われています。極端な話、取引先の1つの国で輸入輸出が止まったとしたら、その影響は日本だけでは済まない、と言ってもいいでしょう。更に治安が悪化したら、日本として支援をしていくことにもなるでしょう。取引ができなくなるだけでなく、支出(負担)が増えることになります。

もし2050年に人口が100億人になり、慢性的に発展途上国に食料が回らなくなり、複数の国で治安が悪化したら、今起こっている問題の比じゃないレベルで深刻な問題になります。発展途上国との貿易が滞ると先進国の経済成長も鈍化し、これまでにない制限下で生活を余儀なくされる時代が来るのかもしれません。

・・・と、このような世界レベルの脅威がやってくるかもしれないのです。

投資家の立場に立てば、永続的にリターンを獲得できるように備えを企業にやってもらわないといけないので、ESG投資という言葉を使って企業に対応を要請しているし、国連の立場に立てば、より持続性のある取り組みを増やすことで、将来のリスクを少しでも低減させようとしている、と私は考えています。

4.日本はどのような社会になってくのか?

世の中的には前述のような背景・文脈から、企業価値創造から社会価値創造へのシフトが求められていますが、日本は労働力人口減少という固有の課題も踏まえなければいけません。

日本の労働力人口減少に関してはもはや止められる状況にないものと考えています。そのスピードを少しでも鈍化させるべく、海外からの労働者受け入れも一層進むと考えられますが、海外の方と一緒に仕事をすることに慣れていない国なので、スピーディに進むとは考えづらいなと考えています。

そうすると残された選択肢は限られます。いま日本で生きている私たちが、今以上に相互協力せざるを得なくなる世の中が訪れます。

人と人の協力なんて当たり前だし、企業間の協力関係も普通じゃないか、と思われる方もいると思いますが、私は劇的に協力関係のあり方が変わる社会になると考えています。

例えば、以下のようなことが起こるのではないかと考えています。

・ある日取引先から相談を受け、かねてから行っていた社員レンタルを行った。今回は経理部長がレンタルされ、管理会計の見直しを手伝うそうだ。そうえいば先週は経営企画部員がレンタルされてたな
会社の庶務業務を近隣住民にやっていだいている。企業勤め経験者も多いのでレクチャーも少なくて済むし、社員に任せるよりリーズナブルだ
・競合が新たな製品コンセプトを打ち出してきた。その内容に驚き、太刀打ちが難しいと考えた。そこで我々は自社の経営上重要なデータを公開し、競合の製品コンセプトより優れた案を広く募集することにした
・私は原因不明の体調不良で病院を転々とし、ようやくある難病であることが判明。しかし長期の入院が必要だと分かったため、勤務先を通じて自立支援事業者に支援を申込み、クラウドファンディングで集まったお金で、病院内で仕事できるように環境を用意した。私はお礼に現在の働きぶりを寄付者に発信している
・大手企業Xは保有する施設を開放している。小中学生の自己研鑽や、高校・大学の有志やNPOの活動で使われている。今回、中学生からの提案をきっかけに、中学生を中心とした地域サービスの開発と収益化を近隣住民と共に行うことにした

何が言いたいかというと、これまで存在していた「家族」「企業」「地域」といったくくりが解かれるようになり、お互いにリソースをシェアすることが普通になっていくのではないかと考えています。

ここでいうリソースには人や設備はもちろん、これまで開示されてこなかったデータやノウハウ、アイデアも含まれます。これらは従来、競争の源泉になるものなので秘匿するべきもの、とされてきましたが、これをむしろオープンにすることで、これまでになかった組み合わせの結合が生み出す新たな価値の創出や、費用対効果の適正化を実現することができます。

ざっくり言うと「みんなで手持ちのコマを持ち寄って、みんなで何ができるだろうか?を考えてみようよ!」ということですね。

とはいえ、こういうことやるのは実際難しいんじゃないの、という意見もあると思います。最後は、日本で本当にこんなことができるのか?について述べていきます。

5.日本における社会価値創出の可能性

結論からになりますが、日本における社会価値創出の可能性は極めて高いと考えています。

理由は以下の3つです。

A. 本来日本人には「三方よし」という考え方が備わっている
B. 制約が課されている状況下ほど日本人は創造的になる
C. いざとなると、日本人は自らを大変身させるバイタリティを持っている

Aは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の3つを兼ね備える近江商人の価値観が、すでに社会価値創出をする肝を抑えていると私は思います。競争ありきだと「売り手よし」「世間よし」にならないことがよくあります。周囲との関係性を大切にしながら、みんなのために価値を提供し続けていくというDNAが私たちには備わっているのです。

Bは、戦後の復興を通じて大きく成長した京セラやソニーから知ることができます。十分な設備やお金がない中でも、絶え間ない試行錯誤により国内外を驚かせる部品や製品の開発を実現させてきたのです。労働力人口が減り続けるから先は暗い・・・ではなく、足りない中で何ができるか?を考えることができると考えています。

Cは、江戸時代の終焉から明治・大正という時代を迎える中で、極めて短期間の中で日本を大きく変貌させてきたことからいえます。以前に5,000円札の肖像画に採用された新渡戸稲造は武士道という本を出版しました。「あんな極東の島国がなぜこんな短期間で変貌を遂げ、強国ロシアに勝てたのか?」と不思議に思った海外の人々に「日本人の心には武士道という精神がある、それがこのような結果を生んだのだ」という感じで、本を通じて答えを示したのですが、当時各国で大きな反響を呼びました。それほどボリュームはないので、興味のある方は是非読んでみてください。

これらのことから、本来、日本人は社会価値創出をするポテンシャルを持っていると考えています。歴史から学び、正しく活かしていくことで、他国では生まれない新しい社会価値創出を生み出すことができるのではないでしょうか。

6.日本で社会価値創出を成功させるポイント

これまでいろいろ書いてきましたが、日本で社会価値創造を成功させるポイントにはどのようなものがあるか書いていきます。

1.テクノロジー社会を理解すること
2.これまでの進路(小→中→高→大)とは異なる選択肢を知ること
3.10代のうちに仕組みづくりと持続をさせる体験をすること
4.異文化を取り込む土壌を作ること

1は、もっと具体的に言うと、「プログラミング」「機械学習」「ソーシャルメディア」などをもっとよく知りましょう、ということです。日本人みなエンジニアになろう、ということではなく、これらがどのように日本を変えてきて、どう変えていこうとしているかを見抜けるようになりましょう、ということです。日本の銀行も自動化や効率化が進められていますが、アメリカでもリストラ待ったなしの状況ですし、SNSに投稿された個人の意見を企業が取り上げて話題にするなど、これまでのビジネスモデルが大きく変わっていこうとしています。RPAやAIなどはこれまでもしばしば耳にしたと思いますが、2020年代は、5G・6Gの普及による本格的なIoTの活用が進み、大量かつこれまでにない種類のデータが得やすくなり、企業というより社会の課題とその解決にフォーカスした新規事業が登場するものと考えられます。たとえば、旅行などの行き先の安全で最適なルートをリアルタイムに教えてくれるサービスとか、信用スコアに基づく優遇措置を提案(割引、上位サービス提供など)してくれるサービスとか、データを活用したビジネスが一層活況となることは間違いないと思われます。そして、テクノロジー社会は、社会価値創造と相性がとてもよいです。なぜならば、低コストで多くの人を巻き込む仕組みを、テクノロジーで実現させることができるからです。

2は、これまで当たり前だった小学校入学~大学卒業までの流れ以外の、新たな選択肢が生まれてきている、ということを示しています。これは実際に私が聞いた話ですが、学校に行かずプログラミングを勉強し、アプリを開発してリリースしている中学生(複数人)がいるそうです。彼らは素行が悪いなど問題があるわけではなく、学校で学ぶことに意義を感じなくなっているということでした。昨年はユーグレナが10代からCFOを募集し、彼らの目線を取り入れていこうという試みもみられるようになってきました。こうみていくと、10代はオトナに従って勉強してればいいんだよ、みたいな考え方はもう古いんだな、と強く感じさせられます。

3は、上記2に関連しますが、世の中に対してアウトプットする機会を持ってもらいたいなということです。これまでの学習は、「なんのためにそれを学ぶのか」という目的を醸成しないままインプットをしていくことが多かったですが、仕組みづくりや持続させるというアウトプットをしていく機会を持つことで、これまでの学びが実務と紐づき、効率よく身に着けていくことができるようになります。また、より大きなアウトプットや成果を実現しようとすると、一人ではできないという現実を知ることになり、自然といろんな人たちと強調してものごとを進めていく体験をしていくことにもつながっていきます。分かりやすくいってしまえば、10代のうちに起業に挑戦してみてもいいと思いますし、社会課題解決を目指す事業者(NGO/NPOや行政含む)への活動に参加してみてもいいと思います。

4は、どちらかといえば我々オトナたちの宿題だと思います。日本人は歴史上、社会価値創造ができるポテンシャルを持っている、と書きましたが、今の時代にそぐわない価値観も継承してきている点には注意が必要です。昔は家父長制という、一部の男性に権限を集中させる考え方が当たり前で、それが年功序列や男性優位な社会の仕組みに繋がっています。少しずつそういった価値観は薄らいできていますが、まだまだ根強いというのが実態ではないでしょうか。また、日本は島国で、国外から異文化が入り込みづらく、価値観が成熟化・固定化しやすいという地理上の事情もありますが、今は既に国境を越えて人や情報が入り乱れる時代です。「そんなのあり得ないよ」と思った事柄に対して、「もしかしたらあり得るのかも?」と一歩立ち止まる思考が、異文化を取り入れていく第一歩だといえます。

7.まとめ

長文にお付き合いいただきありがとうございますm(_ _)m

まとめると、「これまでは競争を軸とした企業価値創出が求められていたが、これからは社会価値創出が求められるようになってきており、労働力人口が減る日本においては、リソースのシェアが社会価値創出の成功のカギになる」と考えました。

また、「歴史を振り返ると、社会価値創出を実現させるポテンシャルは元々日本人は持っており、テクノロジー社会や世の中の変化を知り、異文化を取り入れていくことが重要になる」と考えました。

このような考え方を持ち実践する企業は高く評価されるようになり、結果として企業を成長させる機会をより多く得ることができるようになってくると考えています。

また、社会課題に向き合いその解決をビジネスとして行うことをソーシャルビジネスと言いますが、まさにすべての日本企業はソーシャルビジネス企業となると私は信じています。そして、日本で生まれ育ったビジネスモデルが、海外に羽ばたいていく世界が楽しみでなりません。


記事はこれで以上となります。ご覧いただきありがとうございました。

#2020年代の未来予想図

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