見出し画像

図解で見るヤングケアラーの状況

ご覧いただきありがとうございます。竹位和也です。

「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ヤングケアラー(young carer)は、家族に介護・看病などのケアを要する人がいて、そのケアや家事を行う子どものことを指します。これが長期間続く場合、子どもの時間がそれにより割かれ、学び育つ機会も少なくなってしまうという問題があります。

ヤングケアラーの実態調査の結果は厚生労働省のサイトから確認(「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」。三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる調査)することができますので、本記事では重要と考えられるポイントと、ヤングケアラーの状況を図解してみることにします。

本記事では上述した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」をしばしば引用しますが、その情報源として、要保護児童対策地域協議会で登録されているケースをベースとしている旨が示されており、問題が顕在化している家庭を対象にした調査である点は予めご留意をお願いします。

1.ヤングケアラーについて

「家族内で他の家族の介護・看病をする」こと自体は家庭内での自然な行為として認識されていると思います。とりわけ日本では自助努力がまず求められるので、むしろ当然でしょ、という価値観のほうが一般的かもしれません。しかし、「家族内で他の家族の介護・看病をする」ことが長期化していった場合、生活の質が低下し、子どもの学び育つ機会が失われてしまう側面についてはあまり語られてきませんでした。子どもの権利を保障しようとする考え方も強まってきている中、ヤングケアラーという概念で実態を捉え、子どもの権利を保障しようとする動きが出てくるようになりました。

その一方で、ヤングケアラーという概念の認知度や、そのような考え方で子どもの実態を押さえようとする動きはまだ不十分なのが実態です(資料のP8・9参照)。

2.貧困との関係性

ヤングケアラーがいる家庭においては、ひとり親家庭が約半数、きょうだいのいる家庭が9割を超える状況になっています(資料のP22参照)。ひとり親世帯の貧困率は高い(母子家庭は約半数が相対的貧困)ことが知られていることから、ヤングケアラーがいる家庭は経済面でも問題を抱えていることが推察され、生活保護受給の割合が高いことからもそのように言うことができると思います(資料のP27参照)。

更に、家族のケアに関連し学校の遅刻・欠席などにつながっているおそれがあり、将来について考える余裕もなく、介護が終わっても自分の人生を立て直すことも容易ではないという声もあり(資料のP25・52・57参照)、貧困の連鎖を招きうおそれも見受けられます。

3.図解で解説:ヤングケアラーの置かれた状況

ヤングケアラーが置かれた状況を図解で説明してみます(図解そのものの説明はこちらをご覧ください)。今回はケアの要る親を前提にしています。

画像1

上図は、子どもとその親を2重の円で表現し、社会の仕組みを大きく「行政(青色)」「地域(黄色)」「民間(緑色)」で表して親子を包んだ図となっています。

上図を見ながら、以下内容をご覧いただけると分かりやすいかと思います。

・子どもは親を頼ることができないことを自覚するほか、ケア等を通じて家族の力になっているという認識も生まれ、自己犠牲傾向が強まる
・周囲からの偏見の目などを気にして、家族の事情を話せない
・子どももまた社会の仕組みを頼ることができるが、そのような選択肢があることを知らない

これらのことから、子どもが家族のために自分の将来の選択肢を自ら狭める選択をしうることと、子どもによる世の中の仕組みへのアクセスに乏しいことの2つを指摘することができると思います。

ケアを要する親は子供の献身への申し訳ない気持ちと感謝の気持ちを併せ持ち子どもに接し、それに子どもも応えようとします。その様はときに美談とされがちですが、子どもの将来の選択肢を狭めているおそれについても忘れずにみていかなければなりません。

4.私たちにできることは?

以前に書いた児童虐待の内容と同じになりますが、当事者を支えるNPO等への寄付やボランティアによる支援、ヤングケアラーの状況にある子どもに対して声をかけてあげることも重要だと考えます。

また、ヤングケアラーという概念そのものをより多くの人に知ってもらい、社会課題の一つとして認知されるように個々が発信していくことも大切です。

記事はこれで以上となります。ご覧いただきありがとうございました。

読んでいただきありがとうございます。もしよろしければサポートをお願いいたします。note投稿の品質向上に活用させていただきます!