BGM論争
亜優子はエジプト人友達のバスマとアラビア料理の店にいた。
タジン鍋が食べたかったのだが、なかなか良いお店が見つからず、亜優子はバスマにタジン鍋を知らないか聞いていたのだ。忘れた頃にバスマが亜優子にタジン鍋が食べられるお店があると連絡をくれたので、こうして一緒に来た。鍋とはいえ1人用の鍋に用意されるので、亜優子はベジタジンをバスマはカプサを注文した。
それぞれの注文が来たので、楽しく話しながら食べていると突然バスマがウエイターを呼んでアラビア語で何かを伝えている。
「どうしたの?」
と聞くと
「音楽が好きじゃないから変える様に頼んだの。」
とバスマは答えた。
その後立て続けに2回バスマは音楽を変えるようにリクエストをした。
亜優子には何が違うのか全然分からず、全て似た曲に聴こえた。バスマに聞いてみたが良く分からなかった。アラビア圏内でも国や地域によって全然違うのだろうことしか分からなかった。
「はぁ。ここの料理は好きだけど、音楽が最悪だからもうここには来ないわ。」
とバスマは言った。確かにアラビアレストランは他のレストランよりも割と大きめのボリュームで音楽がかかっているから、亜優子が今まで行った他のレストランで音楽が気になった事が無いのかもしれないが、BGMが嫌でもう来ないレストランって珍しいなと、人の好みは面白いなと亜優子は思った。
バスマは好みがとてもはっきりしていて、自分がいる空間を快適にする事をとても大切にしているので、彼女の性格を考えたらBGMのリクエストをする事もとても自然な事なのだが、亜優子にはBGMのリクエストをするとか、好みとかを考えた事がなく、ただそれを受け入れ続けていたので新たな視点だった。
亜優子がバスマを好きな理由はこれだ。
どこまでも自分に正直なところ。
そして、いつだって新しい視点を亜優子にくれるところ。