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kazのこんなカメラ㉗ Greatwall (長城) DF-5


 中国のカメラは時折日本国内で中古品が見つかることがある。二眼レフのシーガル(海鴎)なんかは割りと見かける機会が多いのではなかろうか。私も鳳凰光学製のレンジファインダー機を一つ持っていたりもする。
 先日実施された中判回。実は企画そのものはロモグラフィーの値下げ直後から立ち上がっていたのだが、持ち込むカメラのチョイスに少し検討の余地があった。

 その前の中判回で掟破りのダブルサリュートを持ち込んだものの、パーマセルテープでの遮光は要する方は腐ったフィルムでカビカビ。遮光しなくても使える方はシャッター幕に何らかの不調があり光漏れが発生してしまっており、あと一歩が惜しい結果となっていた。



 勿論、他の中判機も幾つか持ち合わせているのだが、たまたま誕生日であったこともあり中古カメラ市に出店する予定のお店のHPを眺めていたらこの「グレートウォール」、別名長城と呼ばれるカメラを見つけた。状態は比較的良さそうだが機種そのものがカメラ市に持ってきてくれ……なさそうなギリギリのラインだったため、カメラ市開催前に通販でポッ、と押さえたものである。

 まあいいか、誕生日だしな!



変な変な変な奴

 
 ではこのカメラがどういうものかまず説明をしていきたい。中国・北京の北京宝源光学という会社が1970年代~1980年ごろに掛けて生産していた、66判の中判一眼レフである。
 そう、一眼レフなのだこれ。元々は戦前ドイツのKW=カメラ・ウェルクシュテーテン(ここでちょびっと触れたことがあるかも)という会社が作っていたピロート・ズーパー(英語読みするとパイロット・スーパーとなると思う)という一眼レフのコピーモデルとして生産された。
 特徴の一つとしては圧倒的なコンパクト・軽量さ。これはオリジナルのピロート自体が650gに足りない程の小さなカメラであった事に由来し、中判一眼レフどころか簡易型の二眼レフより軽量である。まあ要するに二眼レフのビューレンズ部分切り取ってるようなものだからな。


 35mm判フィルムの中でもビックボディとなっているCONTAX AXと比較するとこのような形となる。シャッタースピードは1/30~1/200までしか設定が出来ず、戦前カメラのコピー機としてはまあ納得だが1970年代以降のカメラとして考えると物凄く物足りない。しかしこれ、シャッタースピードを上げることが難しい機構上の問題があるのだ。




 このカメラ、巻き上げノブを回すことでロックが外れ、その状態でシャッターダイヤルを操作することでミラーが降りてピント合わせが可能となる。
 変わっているのはこのレフミラーそのものがシャッター幕の役割を兼ねており、シャッターを切ってミラーが上がることによりフィルムに像が露光される。

 近い構造のカメラにイハゲーのEXAというカメラのミラーシャッターが挙げられるのだが、やはりコイツもミラーそのものを動かすという機構上の問題で最速1/250ぐらいまでしか出せない。と、いうか最初期の一眼レフカメラの構造はこういうものだったのだ。なにせ元となったピロートは1930年代のカメラであるもので。
 つまりこの長城というカメラは1930年代の設計をそのまま1980年代に持ち込んだ生きた化石のような機種だ、という事である。


完動!! 君も泣け


 こんなケッタイな東側のカメラ、重要な部分は「これちゃんと動くの?」という点である。実はこのカメラ、作り自体に所々甘い部分がありシャッターがちゃんと動かない事などもあるようだ。一応日本の代理店が輸入していたものらしく、その際に各部の調整でもされていたのか、それとも前のオーナーが稼働調整(ネジの締め直しとかそういうレベルの雑さ)をしておいてくれたのか、実は機械としてはちゃんと使えている。




 先述したミラーシャッターの構造上、四隅に若干周辺減光が出ることがあるが、まあロモグラフィーっぽいっちゃぽいのでこれはこれでいいだろう。

 また、二重露光を防止するため通常はシャッターチャージ+レフミラーは巻き上げノブを回した後でないと降りないようになっているが、物凄く押しにくい多重露光防止ロック解除レバーがあるため、これを使うことで多重露光も可能である。


 何故か初回テスト時は多重露光がうまくいかなかったのだが、多重露光回ではうまく動作させることに成功した。


近接だァァッ


 このカメラにはもう一つ謎機構が付いている。

 長城には交換用のレンズが存在しなかったようだが、話によると引き伸ばしやベローズなどを装着するためかレンズを取り外すことが出来る。このマウントが直径39mmのスクリューマウントになっているのだ。つまり。


Zorki用Industar装着


M39用Industar-61装着

 ライカ用のレンズや初期ゼニット用のレンズを物理的に取り付けることが可能なのである。
 もっとも、マウントすぐ後ろに謎リングが入っており干渉してしまうのでヘリコイドをある程度近接に寄せた状態で、尚且つフランジバックが合うはずもないのでマクロ撮影専用となるがそれを把握しておけば中判カメラで通常は不可能な超近接撮影を実現できる。


 元々寄れるM39スクリューマウント用のIndustar-61 l/zと組み合わせるとワーキングディスタンスは最短5cmほど。実効露出が2段ほど落ちるのでそれを計算に入れることを忘れないことは重要ではあるが。


作例だァァッ!!

 と、言うわけでこのカメラを使って参加した中判回の作例をいくつか並べてみる。


 ちなみにこのカメラのオリジナルであるピロートズーパー、実はつい先日売っているのを見かけたのだがその時点では長城の試写をしていなかったので見逃してしまった。「しまった」と後から言っても遅いんです。
 この長城、さほど見かける機種ではないがレアものという程ではないので興味があったら試してみるのもいいかもしれない。

 ただし、東側のカメラなので当然の事ではあるが動作に関しては自己責任でよろしくおねがいします。


kaz





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