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第109回フィルムさんぽ(MARIXフィルム回)に参加してきた件

 5、6年くらい前の話となるが、ウクライナのフィルムブランドの「Astrum」というブランドがあり、日本国内でもそれらのフィルムが流通していて購入することが出来た。
 ロシアに存在したブランドのSvemaの流れを継ぐモノクロフィルムのラインナップが多かったのだが、一時期カラーネガフィルムが販売されていた時期がある。


 このAstrum Color Negative125というフィルムは、コダックの航空用カラーフィルム「AeroColor IV」を詰め替えたものである、と公式で発表されており、私はこのフィルムの写りが大層気に入った。



 どのくらい気に入ったかというと某カメラ店の店頭在庫10本を全て買い漁ったり、ロシアから個人輸入して手に入れたりで30〜40本は使ったイチオシのフィルムであった。


 Astrumはこのカラーネガの取り扱いをやめてしまい、私も手持ちのフィルムを全て使い切ってしまったので暫くは使うことが出来ないでいた。

 これが本日のさんぽと如実に関係してくることとなる。



MARIXフィルム回!


 さて、日頃お世話になっているフィルムさんぽの企画で、「MARIXフィルム」さんというメーカーがリリースしているフィルムを使う限定回が開催されることとなった。
 昨今のフィルム界隈では、富士フイルム他のフィルムメーカーが虫の息であることもあり、Kodakの映画用のフィルム(Vision3)の詰め替えを行い「○○国で映画用のフィルムから作られた新フィルムです」
と、取り扱いされることも多い。
 そこそこのお値段がすることや、そもそも私はVision3詰め替えフィルムの写りがあまり好きではないという事情から、「Vision3の詰め替えフィルムなら別に参加しなくてもいいか」という割と後ろ向きな気持ちでいた。
 主催より、このMARIX回で使用できる同社のフィルムの銘柄一覧が発表された。想像通りVision3の詰め替えフィルムが数種類とリバーサルフィルム(これをクロス処理することとなる)、あと一種類見慣れないフィルムが一覧に並んでいた。


 マリックス、エアカラー……フィルム?
 説明を読むと、航空用のフィルムを詰め替えて作ったカラーネガらしい。それって……もしかして……

 Astrumのカラーネガと中身同じなんじゃないの!?!?!?

 急いで調べて見た所、やはりコダックの航空用エアロカラー4の詰め替え品であるとのこと。これが判ってから私の反応は極めて早かった。

 「エアカラーが使えるなら出ます!!!!」

 こうして、私は懐かしの推しフィルムを使うためだけに無事MARIX回にエントリーをしたのだ。

 

エアロカラーの傾向と対策


 先述のとおり、私はエアロカラー4の詰め替え品であるアストラムのカラーネガは散々使った。富士フイルムのISO100フィルムより使った本数が多いかもしれない。
 
そうしてある程度の癖への傾向と対策は体に染み付いている部分がある。
 大きいところではISO。アストラムは125、マリックスは100として表記しているが、航空用のフィルムは使用される条件が通常とは異なるため、厳密にはEAFSもしくはISO Aという基準のフィルムである。


 公式が書いている。
 これがデイライトでISO125になるよ、という話なのだが、それは航空用としての話である。
 実際このフィルムを馬鹿正直にISO125として使用するとこうなる。



 悪くはないんだけどなんとなくピリッとしない。もたつく印象だ。また緑色ともあまり相性が合わず、すっとぼけた色味になってしまうことがある。


 どうするか、というと2つ解決法がある。一つは「白い物を撮影するときはISO160として扱うこと」。


 そうすることでポートラに傾向が似た写りとなる。黒っぽい物を撮影する場合は逆にISOを80に設定して撮影する。


 すると赤やオレンジが鮮やかに抜けて、全体的に緑がかった写りとなる。


 これを応用することで、同じ日に同じカメラ・レンズを用いたとしてもガラッと雰囲気を変えた写真を撮ることが出来るのだ。

 また、感光しやすい性質があるためカメラにセットして最初の2〜3コマはまず使い物にならない。普通のフィルムマイナス1枚を意識すると良いだろう。

いざ、出陣!


今回も私は撮影会で使用するカメラを投票で決定してもらった。


 アストラムは先述どおりウクライナのメーカーであったため、同じウクライナで生産されたカメラのKievで使うことが殆どであった。
 折角だから似たようなカメラで使うのもアリか、と思ったがKievは元々出動率が高いし、先日ContaxIIブラックコンタックスも使用した。
 そこで選択肢の中に入れておいたContax IIaが見事勝利し、今回の使用カメラの座を勝ち取るに至った。


 このカメラは残念ながら西ドイツ製なのでこれまでフィルムさんぽのサブで使ったことはあっても、メインで使用することはなかった。しかし、一年に一度くらいは西側のカメラを持ち出してもいいかなとも思った訳だ。

 また、レンズが少し変わったものが付いている。一つはフォクトレンダーのウルトロンであり、これはプロミネント用のレンズを改造して旧Contaxマウントに仕上げたもの。面白いと思ってオーストリアから6万で輸入した。
 一応純正のContax用ウルトロンというものも存在しているのだが、形状が大きく異なる。


 このレンズの事を私は「インチキレンズ」と呼んでおり、異常に高い解像度と優れた写りを持つ。逆光に弱いのが弱点だ。


 もう一つのレンズが「Contax用の」Nikkor 105mm F2.5。ニコンは当時自社のレンジファインダー用マウントとしてContaxのものと同様の作りのマウントを使っていた。
 しかし、フランジバックに若干の差異があるため思い切り絞り込んで使うか、広角レンズで無理やり誤差を飲み込んで使う以外ではピントに僅かにズレが生じる。
 ところがこのレンズは「Contax用に」ニコンが用意したバリエーションモデルなので、Contax IIaでもギリッギリ使える(有効基線長がギリギリなのだ)

 このレンズ、以前のフィルムさんぽで解散時間中にカメラ屋さんで衝動買いしたもの。

 「袋にお包みしますね」
 「あ、いえ、今すぐ使うんで大丈夫です(ガチャ)←Contax Iに取り付ける音」

 という頭のおかしいプロセスで購入した。外付けファインダーに関してはContax用には105mmのレンズがないため枠がない。適当なメーカーのアクセサリ(恐らくニコンS用)を付けている。

 カメラもボディも実際使ってみると物凄く堅実に動くので、西側機材を推してしまいそうになり困る。


そして写りはどうなんだ?


 朝のうちは雨に見舞われたものの、すぐに雨はあがり撮影会も滞りなく実施された。
 これだけエアロカラーの為に来ましたアピールをしてピンボケとか手ブレばかりだったらどうしようと少しばかり心配であったが。








 だから、エアロカラーには慣れてんだって。

 大凡納得できる感じ、というかCニッコールすげえ映るな。


お勉強タイム



 今回はMARIXフィルム回ということで、各フィルムの色味や写りの違いを考察する真面目なまとめもあった。
 エアロカラーは赤みが強く出て
【富士フイルムやスマホで撮影したものに近い色味】

 400Dはやや黄色みが出て
【コダックに近い色乗り】

 100Dはよりフラットな
【自然な色合い】であったりした。

 皆さんの作例を見ていて感じたのが、私は先述のとおりVision3詰め替え系のフィルムはハイライトが赤転びしてそんなに好きではないのだが、光源を調整すると昭和のポスターみたいになって結構好きな味になるなあ、という点であった。

 もう一度リベンジしてみたい気持ちも生まれたかな。


禁断のダブルサリュート


 次回の参加予定は中判回である。幸い手元に何本か120フィルムの余りがあるので、是非とも参加してみたい。



 【ソ連のハッセルブラッド】ことサリュートをメインとサブで2台持ち出してやるわ。





 kaz


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