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kazのこんなカメラ(たち)⑳ KIEVシリーズ


 このシリーズも20回目まで続くこととなった。

 節目のナンバーはちょっと特別編としてロングバージョンを書くことにしようと考えており、第10回に引き続き特別仕様の記事となる。
 時折、「なんでソ連や東ドイツのカメラを使うようになったんですか?」
と質問を受けることがあるのだが、大まかな理由は私のカメラ遍歴でも書いたのだが、

・デジタル一眼を買う
・レンズを買うお金が無いからオールドレンズで誤魔化す
・単価が安かったのでロシアンレンズを買う
・よく写る
・どうせなら本家ボディで使いたくなる

 というのが大きな流れだ。

 で、その本家のソビエトカメラの中で最初に購入したものが、KIEVシリーズのKIEV IIAであった。



 What's KIEV?


 そもそも「KIEV」ってなんだろう。
 紙面の都合で大幅に簡略化した説明をする。

 戦前ドイツ、カールツァイス財団の花形、ツァイス・イコン社で生産されたレンジファインダーカメラ「Contax II」。
 Contax Iの後継として生産されたこのカメラは、戦前ドイツを代表する、ライカと互角かそれ以上の性能でプロフェッショナルにも好まれるものであった。

 第二次世界大戦でドイツが敗戦したことにより、戦勝国となるソビエト連邦がこのツァイスイコンの工場を実質的に接収することになった。
 (ここで連合国は工場内の設計図や部材を処分して残されたツァイスイエナの技術者がリバースエンジニアリングでJenaContaxをーとかそういう話が出てくるが割愛)
 で、紆余曲折あった後ソ連はこのContax IIのコピーを作ってウクライナの工場で生産することにした。

 それがKIEVである。

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 所々の違いはあるが、Contax IIと殆ど同じ設計であり、当然ながらよく写る。
 ソビエトカメラの中ではかなり安心して使える部類のカメラではあるぞ。


 Why KIEV?


 このカメラに興味を持った理由は2つある。どちらも簡単だ。

①レンジファインダーカメラの構造に興味があった。
 この時点の私は一眼レフをデジタル含んで3台持っているだけであった。
 そのためレンジファインダーカメラの距離計によるピント合わせ、というものがどういったものであるのか知らず、正直ちょっと好奇心が湧いていた。
 「見るだけだけどねー」と言い訳しながらカメラ屋さんのバルナックライカと値札を横目でチラチラ見ていたりしていた。

②ツァイスのレンズやカメラの練習をしたかった。
 M42オールドレンズに付いて初心者が調べると、多くはロシアンレンズとそのオリジナルとなる(これも厳密に言うと突っ込みたいのだが)カールツァイスレンズについて詳しく説明されている。
 そういうテキストを読み込んで作例を見ればやはり一回使ってみたいと思う。

 だが、ツァイスのカメラやレンズは高いのだ。

 今からするとそうとも思わないが、やはり始めたての趣味でレンズが3万円です!等と言われると困ってしまう。
 そこでそのクローンなら比較的安く手に入るぞ、というスケベ根性である。


 How's KIEV?


 先程も書いた通り、誤解を恐れずに大雑把に言えばKIEVは戦前ドイツの傑作機・Contax IIとほぼ同一だ。
 Ebayで知る人ぞ知るarexから箱説付き15000円くらいで購入し、無事ウクライナから届いた私のKIEV IIAはすばらしい写りを見せてくれた。

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 これが購入一ヶ月後くらいかな?
 会津に持っていってシャッタースピード1/25などで手ブレしないように撮影したものだ。

 そしてどんどん増えるレンズと周辺機器。

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Jupiter-12仕様
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Jupiter-11仕様


 ebayを使うと高いものを除くとレンズが1本 6~8000円くらいで買えるのだからこれはハマるのに丁度いい形と深さの沼であった。

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 フィルムカメラ歴1年未満の時期から随分使ったもので、私は特に交換レンズのJupiter-11(テレゾナーのコピー)が一番肌に合ったかな。

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 Second KIEV


 そんな形で何年かずっとKIEVばかりを使っており、ちゃんと購入したバルナックライカを使う時でもついついKIEV/Contaxの癖が抜けず空ギアを回してしまう(KIEVやContaxのピント合わせは右中指でギアを回して行う)体になっていた。



そのくらいにKIEVが馴染んできた頃、KIEVを持って日光に写真を撮りに行くことにした。

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 ところが、次の写真を撮ろうとしてもシャッターが切れない。
 弄っている内にシャッターが偶然切れても、今度は巻き上げてもシャッターがチャージされない。
 内部部品のグリス抜けか噛合い不良が起きてしまったのだろうか。

 泣く泣く日光では回収できるネガだけ回収するにとどまった。

 ソビエトカメラは単価は安いが修理してくれる方が極めて少なく、自分でやろうにも素人の手習いでは分解することもままならない。
 
 この時期になると他にもカメラを色々(無駄に)持っていたので、当面は他のカメラを使っていた訳だが、どうしてもKIEVのお手軽さは捨てがたい。
 実はContaxと比較するとレンズやボデイが軽いという特徴もあるのだ。



 そこで。


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 もう一台KIEVを買った。

 露出計が付いたContaxIIIのクローンとなるKIEV IIIで今度は少し高いがウクライナ国内で修理屋さんがオーバーホールしてくれたものであり、お値段が25000円くらい。
 もうあんまりContaxと変わらないな。 

 何と露出計が生きている。

 既にKIEVくんとは長年宜しくやらせて頂いていることもあり、以前より少しは切り取りが上手くなったのではないかな?という気はする、が、どうでしょう……(小声)

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 このKIEVは今でも私のRF機としては一番活躍している。
 今はContaxをちゃんと持ってるのに。

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 そして4Aも持っている。
 IIやIIIと比べるとやっぱり質感がちょっとチープだが。

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 This is KIEV!!


 そんなこんなで、今やKIEVは私の中でとても大切なカメラの立ち位置となっている。
 そりゃあオリジナルのContaxの方が精度も価値も上だが、手持ちのカメラの中で一番教わった事が多いのはおそらくこのKIEVシリーズだ。
 NONAME KIEVやウクライナ語銘板あたりのものは戦後のContaxよりずっと欲しい。

 そういった理由で最初に触ったKIEVがとても良かったからソビエトカメラに手を出し始めてしまった、というわけだ。


 君もKIEV沼に落ちてみないか?




 kaz

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