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20代の若手が教えてくれた仕事について大切な事

M君は若手のホープだった。まだ20代だが、経営の勉強をする為、東京の本社からバンコクに送り込まれた。任されたのは赤字会社の再建。会社はこの経験が彼の将来の為になると考えているようだった。タイ語も全く話す事が出来ず、文字通りゼロからのスタートだったが、彼はその仕事に懸命に取り組んだ。

M君の本社の社長がバンコクにやって来た時、一度、私は食事を共にした。社長と話していると、彼がM君の事を高く評価しているのが良く分かった。仕事を終えたM君が後から食事に加わった。しばらく世間話をした後、話は会社の事になった。M君の会社では最近ちょっとしたトラブルがあり、社長はその解決方法について彼に尋ねた。M君はその問題について陳謝したが、その責任を問われると、「責任を取れなかったら辞任します。」と言った。
「お前は何を考えているんだ?」と社長はM君を一喝した。
社長が欲していたのは解決方法であって、辞任云々ではなかった。社長はM君が唐突に言った「辞める」という言葉に怒ったようだった。私も彼が売り言葉に買い言葉で思わず「辞任」という言葉を口にしたのだろうと思った。

結局、その日の食事はそれで終わった。2人は無言でタクシーに乗り込み、帰宅した。

その日の晩「今日はご迷惑をかけてすみません。」とM君からラインがきた。「社長が怒ったのはあなたへの期待の裏返しだから、もう一度冷静になった考えた方がいい。」と返信した。

数日後、彼から再びラインが来た。
「社長とももう一度話し合いました。僕が間違っていました。もう一度仕事を頑張るつもりです。色々と有難うございました。」

昨日偶然、M君が大事にしているという言葉を聞いた。

8月いつも思い出す 元軍人・経営者祖父の言葉             
自分が何者か知りたければ トップを目指しなさい。
そうすれば自ずと 自分が何なのかが分かる。
世の為、人の為、 志無くして生きるという事は 人ではない。

「トップを目指しなさい。」というのは、単に社長を目指すという事だけでなく、毎日、職場で一番になるという真剣な気持ちで、責任を持って仕事に取組めば、その過程で自分が「どういう人間なのかが分かる。」という意味だろう。

それから「志」という言葉を聞いたのは久しぶりだった。M君は私なんかに言われるまでもなく「志」を持って仕事に打ち込んでいたのだ。彼の会社でどんなトラブルがあったのかは分からないが、彼は自分の信念に基づいて行動し、その上で「辞任」という言葉を口にしたのだ。そんな事も知らずに「冷静になった方がいい。」なんて分かったようなアドバイスした自分が恥ずかしかった。「仕事は仕事」だと割り切って、何も考えずに働くのが悪い訳ではないが、折角、私達は毎日多くの時間を仕事に割いているのだから、それがどれだけ他の人の役に立っているか考える事も必要だと思う。シンプルだが、大事な事を改めて教えてくれた彼に感謝したい。

私は自分の仕事について考えた。「日々職場でどれ程の責任感を持って働いているのか?」又、「人の為にどんな「志」を持って毎日、仕事をしているのだろうか?」そして「私は何者なのだろう」かと…

コロナ禍にもかかわらず, M君は見事に会社を立て直し, 事業を拡張している。

彼は「自分は何者なのか?」という答えを見つけただろうか? 次回、会った時に尋ねてみようと思う。

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