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小さなカップケーキ         ー誕生日に気付いた大切な事ー

誕生日が今年も突然やってきた。                       

朝家を出る時、下の娘が眠そうな目で「お父さん、誕生日おめでとう。」と小さく呟いた。寝不足で朝はいつも不機嫌な彼女はそれ以上は話したくないようで、それだけ言うと、足早にスクールバスの中に消えていった。彼女の最大限の「思いやり」が何だかおかしかった。

職場では同僚が昼休みに、アイスクリーム ケーキで誕生日を祝ってくれた。彼らが多忙な事を知っているので、時間を割いてもらって、何だか申し訳ない気がした。職場には以前私と誕生日が同じ同僚がいたが、彼女は去年退職し、イギリスへ帰国した。彼女は今年、どんな誕生日を迎えたのだろうか? 誰かが彼女の事を祝ってあげるといいのだが...   

仕事の後、テニスをした。その時、同僚のKが小さなカップケーキを持ってきてくれた。彼女とは週に一度テニスをするだけで、仕事上の付き合いはほとんどない。それなのに、私のためにわざわざケーキを用意してくれたKの優しさが嬉しかった。いつも他人の事をあまり考えていない私に彼女は「周りの事をもっとよく見て、支えてくれる人に感謝をしなさい。」と言っているのだと思った。 

今まではずっと誕生日とは自分の事を祝う日だと思っていた。だけどそれは間違いだった。それは自分を支えてくれる人に感謝する日なのだ。    外国に住んで20年以上になるが、これまでやってこられたのは家族や同僚、そして友達の支えがあったからなのだ。大事な事を教えてくれたKに感謝したい。

夜中にKにもらったカップケーキを食べた。ブルーベリーがのっていたそのケーキは少し甘酸っぱい味がした。


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