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言葉には力がある。でもその奥にある想いにこそ、真の力が隠されている。

対話とアート。

一見すると対極の位置付けにある、対話(言葉)とアート(イメージ)を行き来することが、私の活動の軸です。

その源は、幼少期から現在に至るまで海外を含む様々な地域に住み、多様な人間模様を目の当たりにしたところから始まりました。

年号がちょうど昭和から平成に切り変わった1989年1月8日に、家族と共に生まれ故郷の名古屋から、未知の地サンフランシスコに降り立ちました。

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(なぜ全身赤コーディネートだったのかは謎。そんなに赤が好きだったのだろうか...。めちゃ目立つやん。)

当時6歳だった私には、アメリカに引っ越すことで人生がどれほど変化することになるのか、つゆほどもわかっていませんでした。が、想像するに難くなく、生活は一変しました。

とにかく、周りを理解できない。

なぜかいきなり現地の学校に入れさせられた私は、当然ながら先生と生徒の誰ひとりとして何を言っているのか、わかりませんでした。(英語どころか日本語も発展途上な年齢だったので、当たり前と言えばそれまでですが...。)

それを象徴するエピソードをひとつ紹介します。先生が「これからランチョンマットを作ります。一人一枚画用紙を渡すので、そこにアルファベットを紙を囲むように書いてね。」と言ったのに、私は紙一面に絵を描きまくってました。だって、画用紙を渡されて、カラフルなペンやクレヨンがあれば、絵を描け、と言われてると思うじゃん。

どうやら自分は何か間違っているらしい、と気づいた頃には時すでに遅し。慌てて裏面に見よう見まねでアルファベットの真似事みたいなものを書いたものの(はい、アルファベットもまだ覚えてませんでした)、先生に「全く違います」的な顔をされ、今思い出しても苦い思い出が蘇る...。

当然、友達もできません。
ある日、ある女の子が転校してくるまでは。

韓国から引っ越してきたその子は、私と同じように英語が話せませんでした。必然的に休み時間を一緒に過ごすように。どのようにコミュニケーションをとっていたかは、謎です。一方が日本語、もう片方が韓国語で話しているわけですから。

ただ、今振り返ってみても不思議で仕方がないのですが、私たちは互いを理解し合っていたという感覚が、今でもありありと残っています。そして、その出来事を通してコミュニケーションとは、言葉でするものではない。心と心を通じ合わせていくものなのだ、と実感しました。それだけ、私たち二人は必死だったのです、理解しあえる存在を見つけることに。

この体験こそが、今の私の活動の軸「対話とアート」を支えています。

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私の活動のひとつに、dialogue drawing という取り組みがあります。対話を通して目の前にいる方の絵を、私がライブで描いていくアートセッションです。

その方が今、大切にしている言葉や想いを軸に対話をしながら、即興で描いていくのですが、対話をしながら心がけていることがあります。それは「言葉の奥にあるエネルギー」です。

以前、dialogue drawingを開催した際に、ある方は「感謝と寛容」を一番大切にしている、と伝えてくれました。

・家族や仕事、そして大自然。はたまた、これまでの過去に対する感謝の気持ち。
・自分や人の嫌だと思うことに対して寛容でありたいという願望。

お話をしながら見えてきたことは、「感謝」や「寛容」を超えたところにある、その方のこころざし。ご自身の役割の葛藤。冷静さと情熱の狭間。感性的な面と理性的な面。その両極の自分を眺めている意思の力にこそ、本質がある、と。

そして、出来上がった作品はこちら

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言葉は単なるフックに過ぎません。
それを足がかかりとして、その方のエネルギーに目をむけていくこと。
そして、そこから抽出されたエッセンスをもとに、一枚の絵に仕上げていくこと。

私の活動は、表層だけを抜き取ると「絵を描くこと」ですが、もう一歩掘り下げると「対話」を交えて、その本質に目をむけていくこと、だと考えています。そして、これは何も絵を描くことだけに限らず、全てのことに言えること。お客様と打ち合わせをしていても、家族との会話ひとつとっても、そう。

目の前の人が今言おうとしている、根っこに意識を向けることが、すなわち、心と心を通わすためのきっかけになるのではないでしょうか。そして、それこそが、私がnoteを始めたひとつの大きな理由になります。

言葉には、力がある。
でも、その言葉の奥にある、想いにこそ、真の力がある。

余談ですが、冒頭の作品は原体験をもとに出来上がったシリーズ「Draw like Writing」。そう、アルファベットの真似事のように文字みたいなものを描いたあの日のエピソードをもとに生まれた作品です。



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