移住で経験した商品梱包のカルチャーギャップ。そして辿り着いたトイレットペーパーの梱包の話。
私が米国に引っ越したのは2019年の夏。COVID-19の影響もあり2020年はオンラインショップにたくさんお世話になっている(ポートランドの小売店の多くは閉まるか、予約来店に絞るか、密を避けるため入場制限を行っている)。
米国でオンラインショップから家に届く荷物は、ざっくりと適当に段ボールに入っている。日本であればクレームにすらなりそうなものも多い。とりわけ環境に配慮をしていたり、プラスチックを避けていたりするショップから買おうものなら、購入した商品が上手に隙間に詰められてあたかも緩衝材として使われている。
(野菜はこの通り。冷凍物以外すべてガサッと入っている)
そのパッケージングに慣れてしまった私が、日本にいる友人に、この「米国スタイル」で先日荷物を送ったところ「誰かが途中で開封したかと思った」と言われた(笑)。もちろんプチプチの緩衝材は入れていない。商品ごとにビニール袋で個装もしない。隙間隙間に商品を詰めていって、そのあたりにあったこっちで荷物に入っていたクラフトペーパーをグシャっと最後に被せただけで送ったのだから、まあそう言われても仕方がない。出産祝いにポートランドで作られたベビー用Tシャツとビブを入れたのだ。もちろん我が家に無包装で段ボールに直に入って届いたから、そのままこれも「米国スタイル」ということでお届けした(布はとてもいい緩衝材になっていたはずだ)。
一方で先日こちらで日系ショップから商品を購入する機会があった。段ボールの中に1個ずつ丁寧に個装されていた。すべて梱包を解き終わったときにたくさんのプラスチックゴミとリサイクルペーパーが出た。ゴミとリサイクル物と届いた荷物の体積を比較すると、ゴミがいちばん多く感じた。
もちろん衛生的には良いかもしれない。それに傷もつかないかもしれない。でもこっちの環境に優しいショップのスタイルに慣れていた私は、少し苦痛に感じたのだった。少なくとも心に痛みを感じた。
移住を経て、この出会う梱包様式の変化は、地味だけど価値観を変えたライフイノベーションとなった。
梱包がゼロ・ウェイストであること。そのビジョンはブランドになり得る。
米国のD2Cにおいては、「パッケージフリー」を売りにするオンラインショップが複数登場している(日本においてもいくつかは存在する)。
代表的なのはこのショップだろうか。
4年間に出したゴミがメイソン・ジャー1瓶として知られるLaruren Singer氏氏が設立したパッケージ・フリーのセレクトショップだ。
Laruren Singer氏のTED talkはこちら。ゼロ・ウェイストの活動家だ。
商品自体も極力パッケージがないもの、あるいはプラスチックを使わないもの、コンポスタブル(堆肥化できる)ものが確実に増えつつある。
本当にそれ必要?誰のため?何のため?を問い直す。
家に届いた荷物を見てみて欲しい。その梱包材は必要だろうか?壊れないように過剰に包装する必要があるか。誰にとっても完璧な状態を目指すとキリがない。人によって感覚は異なるから、それを突き詰めていくとどんどん膨れ上がっていく。そうして生まれたのが今の梱包状態のように思う。
家で使うものなら「多少の傷がある事」と「ゴミを増やすこと」、俯瞰してみた時、ちょっと外の世界に目を向けた時にどちらが良いだろうか?
ただギフトの場合には、相手を喜ばせたいという思いもあり、包むことにも意味が生じることもある。でもそのギフトも一考してみたい。それは自己満足に終わっていないか。何の意義があるか。
これは私がご近所さんから(うちが引っ越して来た時に)「Welcome Neighborhood!」といただいた手作りお菓子のプレゼントだ。
季節の庭で摘んだお花。ペーパーと麻の紐。ゴミはいっさい出なかった。
こんなことを考えながら過ごしたコロナの2020年(オンラインショッピングが増え、家にしかいないから、こういうことに向き合う機会が増えたのだろう)。そうしながら、私は次のプロダクトとなるトイレットペーパーをつくっていた。
この米国スタイルの梱包のカルチャーギャップは、つくったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」に少なからず影響している。
BambooRollはフリープラスチックの段ボール梱包
1月に始めたBambooRollは竹でつくったトイレットペーパーの定期便サービスだ。
竹と無漂白など商品の話はこちら(↑)に書いてあるから割愛。サイトを見てほしい。
ここでしたいのは梱包の話。バンブーロールの梱包は以下のとおりだ。
⭐︎プラスチックフリーでリサイクル段ボールに梱包
⭐︎個装は基本はNO
⭐︎閉じるテープもリサイクル可能
⭐︎プラスチックフリーでリサイクル段ボールに梱包
なぜプラスチックの袋に入っているのか?それは水に弱い商品だからではないかと思う。でもこれを辞めたかった。ゆえにリサイクル段ボールに18ロールを詰めるスタイルを選んだ。
⭐︎個装は基本はNO
梱包材をリサイクル段ボールにしたら次に課題となるのは、中の個装だ。ここはとても悩んだ。緩衝材となり防水の役割を果たす個装をしないと、段ボールに直接入れることになる。輸送時に水濡れしたりぶつけたりした場合に商品が損傷する可能性がある。またペーパーを外に出してしまったら衛生面が気なる方もいるだろう。でも紙も資源だ。
配達の方が配慮して届けてくれたとしても、多少のめくれや潰れが起きるかもしれない(「水濡れ厳禁」マークだけは上部に気づいてもらえそうな箇所に付けた)。無漂白はめくれがなぜか起こりやすい。が、家で使う、使用して3秒以内に流すトイレットペーパーだ。そこは完璧や許容の基準を少し緩和して、おおらかな目で見ていただけると嬉しい。梱包へのひとりひとりのおおらかさが、地球や社会に対してはプラスに働くと信じている。
(ただし万が一、ひどい損傷があった場合にはすぐに知らせてください。速やかに対応いたします!)
また衛生面に関してはトイレの隅っこにあっても許容してもらえるようなパッケージデザインを心がけた。最後の方になるまでダンボールから出しながら使ってほしい。
実はダンボールの中に2個だけ梱包したものを入れてある。次の定期便が届いたタイミングで余っていた時は災害時の備蓄として保存という選択肢があるかもと考えた。また、竹のトイレットペーパーの輪が拡がって欲しい、このような考えが繋がっていって欲しい、という願いから友だちにそれを渡して定期便を始めてくれたら、その賛同と応援へのささやかなお礼として2人にいくらかのキャッシュバックをする仕掛けとなっている(デザインは届いたときのお楽しみ!)。ちなみにトイレットペーパーは荷物を送る時に緩衝材としてなかなか有用なはず。家族知人に送る荷物の隙間が空いちゃった時に、緩衝材代わりにそれを使うことをオススメしたい。
⭐︎閉じるテープもリサイクル可能
段ボールをテープに関してもプラスチックフリーのものを選んだ。粘着面の糊もリサイクル時に難があるという話も聞き、盗難防止にもなる「ウォーターアクティベイト」(切手のような仕組み)のテープを使うことにした。日本ではあまり馴染みがないが、欧米を中心にこのテープを活用するショップは増えている。これがリサイクルが可能であることも確認した。
このようにトイレットペーパーはトイレに流し(JIS規格のほぐれやすさの基準を満たすことを検査で確認している)、それ以外はすべてリサイクル可能なのでゴミは出ない(輸送ラベルだけはごめんなさい)のが、このバンブーロールだ。
まだまだ工夫できる余地はあるので、梱包リサーチは引き続きやっていこうと思っている。ユニークな環境配慮型の梱包を見つけた方はぜひ教えてください。
なお、梱包話以外のバンブーロールをつくるまでの話はこちらに。
メイン写真:テラケイコ
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