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インドネシアの気候目標 研究団体は「決定的に不十分」と厳しい評価

今年、インドネシアは気候目標を更新し、より排出量目標を引き上げたにもかかわらず、世界的な研究コンソーシアムからは「決定的に不十分」と指摘されている。

今年、インドネシアが国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局に提出した最新の「国家決定貢献(NDC)」では、温室効果ガスのネットゼロを2060年までに達成し、CO2排出量については2030年までに単独で31.89%、国際支援を通じて43.2%削減するという計画だ。これは、2016年に最初に提出した各NDC目標、29%と41%からわずかな引き上げだった。

インドネシアの森林・土地利用セクターは、排出量削減に最も貢献する領域と予測されており、全体の排出量をベースラインの数値から25.4%、CO2換算では729トンの削減を期待されている。2番目に大きな貢献となるのはエネルギー部門で、15.5%の削減(CO2換算で446トン)となり、その後を廃棄物の1.5%、農業の0.4%、工業の0.3%が続く。

こうした変更を加えたにもかかわらず、研究コンソーシアムのクライメート・アクション・トラッカー(CAT)は、インドネシアの気候目標を「極めて不十分」と評価し、新たに目標を引き上げる発表前である2021年9月時点と同じ評価を下した。

「決定的に不十分」というのは、5つの評価で最も悪いものだ。そのほかは「非常に不十分」「不十分」「ほぼ十分」「パリ協定で目指す地球温暖化抑制値1.5℃目標に適合」だ。

CATによるとすべての国が「極めて不十分」という評価に該当する目標の下で政策を遂行した場合、今世紀末には地球温暖化が産業革命前に比べて4℃超上昇すると指摘する。

インドネシアのエッセンシャル・サービス・リフォーム研究所(IESR)のファビー・トゥミワ所長は、インドネシアが強化した公約は、依然「通常通りの予測」に基づいたものであるため、容易に達成可能だという。そのため、より野心的な目標設定が求められるという。

ファビー所長は、地球温暖化を1.5度未満に抑えるというグローバル目標に沿うには、インドネシアの排出レベルが2030年までにピークに達する必要がある、と付け加えた。

排出量のピークとは、温室効果ガスの排出量が翌年以降には減少に転じ、安全と思われる排出量に到達する時点を指す。

「より野心的な排出削減に向けた行動をとるための時間はあまり残されていない。これは我々の適応能力と高い相関関係がある。温室効果ガスの排出削減が遅れれば遅れるほど、気候災害リスクは高まり、気候災害による影響も大きくなる」とファビー氏は警告する。

大幅な排出削減を達成するためには、エネルギーセクターや森林セクター、土地など、排出量の多いセクターで、より野心的な対応を実施する必要がある。

IESRで、CAT(クライメート・アクション・トラッカー)とのコーディネーターを務めるデリマ・ラマダニ(Delima Ramadhani)氏は、今後10年間、インドネシアが世界的な努力目標に沿った形で公正に貢献できるような政策を実施すれば、インドネシアの気候行動に関する状況は改善されるはずだという。

インドネシアのエネルギーシステムでは、現在約61%を石炭火力発電所が占める。「これを、2030年には炭素回収・貯留技術を用いずに、わずか10%まで大幅に削減する必要がある。2040年に完全停止するまで、徐々に操業を止めていかなければならない」とデリマ氏は付け加えた。

デリマ氏は、「パリ協定に従って、インドネシアが石炭火力の停止を実施することは、世界に大きな役割を果たすことになる。そのためにも気候変動へのコミットメントと同時に、国際支援の拡大を図らなければならない」と述べた。

この報告書の内容を知る国家開発計画庁(Bappenas)の環境局に勤めるエリク・アルムンディト(Erik Armundito)氏は、政府による温室効果ガス排出削減のための行動を監視し続ける、と述べた。

さらにエリク氏によると、政府は2060年までのネットゼロ排出にすいて楽観視しているため、目標達成を確認できるようなシミュレーションを開始した、という。

「最新のシミュレーションによると、2050年には絶対量にして360百万トンのCO2削減を実現し、2060年には排出量をゼロにするというシナリオを想定している」。なお絶対量とは、排出される温室効果ガスの総量を指す。

(引用元)https://www.thejakartapost.com/indonesia/2022/12/20/indonesias-renewed-climate-targets-still-critically-insufficient-says-research-group.html


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