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報道と学術文献は必ずしも一致しない

これまでもよくあることですが、研究者が意図しないことを報道が勝手に作り上げることがあります。最近では、アメリカの大手新聞ニューヨークタイムスが、「Scientists Find No Benefit to Time-Restricted Eating(科学者は時間制限食事法に何の効果も発見しない)」という見出しで、ある文献を取り上げました。それと同時に、Twitterでは、文献を読んでいない方々の間で、「時間制限食事法は意味がない、根拠がない」などと炎上しました。

その文献のタイトルは、「Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss(カロリー制限食による体重減少への時間制限食事法の有無の影響)」で、中国で肥満体の人を対象に1年かけて行った調査した観察結果です。

139人の肥満した中国人を無作為に2つのグループに分け、1つのグループは、朝8時から4時までに食事時間を制限して、もう1つのグループは好きな時間に、カロリー制限食(男性は1500−1800kcal、女性は1200−1500kcal)を1年間食べ続けた結果、減量にもその他の計測結果にも違いがなかったとのことです。

一言で言い換えると、「肥満体の人がカロリー制限を1年間する場合、時間制限はさらなる効果を出さなかった」ということですから、新聞の見出し、「科学者は時間制限食事法に何の効果も発見しない」とは大きく違うことがお分かりだと思います。

時間制限食事法には、インスリン感受性をよくする、腸内環境をよくするなどから、認知症を含む慢性病予防効果があることは、観察研究だけではなく、分子レベルで解明されています。減量に関しても、筋肉を維持して体脂肪を減らす効果が観察されています。私の住むサンディエゴ市では、大学としが共同で、アプリを使って時間制限食事法で、消防士や警察官の体重を含む健康管理をしています。

さらに、ニューヨークタイムスは、この文献の著者ではなく、別の研究者へのインタビューから、「痩せるのは、カロリー制限によってであり、時間制限食事法に意味なし」と結論づけているのです。明らかに、意図的に結論を導いています。

おそらく来週ぐらいには、日本の新聞もこの記事を丸写しして報道するのではないでしょうか?ある意味楽しみです。

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