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第1回AI制度研究会

夏も本番。これだけ暑いと基本はビジネスカジュアル。スーツを着る気にはなれません。しかし、この日はさすがにスーツを着ることにしました。とはいえネクタイはしませんし、現地到着まではスーツの上着は手に持った状態ではありますが。滴る汗で上着に染みができないか心配です。溜池山王駅から山王パークタワーの裏側に出て、緩い坂を150mほど登ったその先には…。

総理官邸にて

ちょうど一週間前になる8/2(金)に、総理大臣官邸で、第11回AI戦略会議とあわせ、第1回AI制度研究会が開催されました。私はAI制度研究会の構成員として、この官邸での会議に参加することになりました。

これまで弥生の社長としての取り組み(例えば、デジタルインボイスに関する取り組み)を通じて、財務省や内閣府、デジタル庁などの省庁や国会議員会館、あるいは自民党本部などを訪問することはあったのですが、総理官邸はさすがに初めて。この歳でなんですが、それなりに緊張します。入館時のセキュリティチェックは相当厳しいんだろうなと思ったのですが、意外にあっさりと中に(当然、事前にそれなりの手配がされているということだと思います)。中に入ると、報道などでよく目にする光景。写真を撮りたくなりますが、色々と制約があるでしょうから、グッと我慢しました(ちなみに冒頭の写真は会議終了後に外で記念に撮っていただいたものです、笑)。

岸田総理大臣が出席されての会議(第一部)は45分。その後内閣府のビルに移動しての第二部は1時間15分で、都合2時間の初回会合となりました。

AI制度研究会とは

昨年5月に、日本におけるAI戦略を特にイノベーション推進の観点から議論するためのAI戦略会議が立ち上がりました。メディアでも多く報道されていますから、目にされた方も多いのではないかと思います。日本におけるAI研究の第一人者である東大の松尾教授が座長を務め、私が副会長を務めるソフトウェア協会の会長でもあるさくらインターネットの田中さんも構成員として参加しています。

AI戦略会議では、様々な議論が行われていますが、この5月には、AIがもたらすリスクに関する論点整理で、生成AIの登場によりAIのもたらすリスクが多様化・増大する中で、リスク対応のための一定の規制が必要ではないかと問題提起がされました。4月には、事業者がAIを開発、あるいは、活用する中で、AIガバナンスの統一的な指針として「AI事業者ガイドライン」が公表されていますが、自主的な規律だけではリスク低減を十分に実現できないのではないか、また、健全な競争環境のためには、むしろ適切な規制が必要ではないかという問題提起です。これを受けて、法規制も含めたAIの制度のあり方を検討するために今回立ち上がったのがAI制度研究会です。

私はソフトウェア協会の副会長として、AIを開発・提供する事業者の代表としてこの研究会に参加することになりました。似たような立場では、私が昨年から今年にかけて取り組んだG検定/E資格試験を実施している日本ディープラーニング協会の岡田さんも参加されています。もちろん、求められるのはバランスの取れた議論ですから、消費者団体の方も参加されていますし、研究者や法律家の方も参加されています。

基本的な考え方

議論はまだ始まったばかりですが、研究会の議論は法規制ありきではありません。AIによるイノベーションとAIの規制のバランスをどう取るか。この際に基本的な考え方となるのは、リスクベースのアプローチです。AIの利用促進に向け、AIガバナンスが過剰規制とならないよう、ガイドラインのようなソフトローの最大限の活用を基本としつつ、リスクの高い使われ方をするAIや人権侵害や犯罪等につながり得るAIに対して必要な法的規制(ハードロー)のあり方を検討しようとしています。

日本におけるAIの制度を考える上では、国際的な整合性も考慮する必要があります。日本だけ過剰な規制を行えば、AIのイノベーションにおいて日本だけが取り残される可能性も否定できません。

一方で、イノベーションが最優先であり、何の規制もすべきではないという気はありません。AIはいわば諸刃の剣。うまく活用すれば大きなメリットを得られますが、使われ方によっては社会に大きな害をなすことも考えられます。あくまでも最小限だとは思いますが、社会に取り返しのつかない害をなすことがないよう、一定の歯止めは必要だと考えています。

メディアの反応

これまでにも公的な性格をもつ研究会に参加したことはあり、その経験から、今回のAI制度研究会もひっそりと開催され、ひっそりと報告書がwebサイトで公開されて終わりかと思っていました。しかし今回は、初回から総理官邸で岸田総理大臣が出席されての開催になるだけあって、それなりにメディアから注目されているようです。

こちらは日経新聞での報道。Web版では、構成員の一人として私の名前も載っています。私は見ていなかったのですが、World Business Satelliteでも報道されたようです。友人が教えてくれたのでTVerで確認したところ、確かに少しだけ映っています。名前も出ていないのに、よく見つけましたね、という感じ。

2024/8/2放送のWorld Business Satelliteより引用。なお、右上の「AI研究の第一人者」というのは、もちろん私のことではなく(笑)、この前にインタビューが放送されたAndrew Ng氏のことです

私のブログを見ていただいていた方はご存知だと思いますが、昨年春に弥生を退任する際には、AIが人を超えることなどないだろうと考えていました。しかしその後、E資格合格を目標に、AIを一から勉強した結果、私の考えはこの一年間で180度変わっています。AIが人を超えるかどうか、それはもはやifの問題ではない。問題はwhen & how、それがいつどのように起きるかだと考えています。子どもの親としてAIが実現する人間社会の未来は明るいものでなければならない、そのためにできることは何でもやろう、と思っていただけに、今回のAI制度研究会は、AIの将来であり、人間社会の未来に自分なりに貢献できる大きなチャンスだと思っています。


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