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夢日記

時々長い夢を見る。断片が次第に繋がって、一つの物語を成してゆく。

夢の中の母は、まるで母親然としていた。安心感に満ちた観音様みたいな顔で、ふふふ、と笑った。私を挟んで向い側で、同じように父が笑う。私はほっとしながら、かすめた違和感に蓋をする。

突然、素敵な指輪ね、と母が言った。ふと自分の手に目をやると、大きな宝石のついた、美しいリングが嵌っている。リングは確かに素敵だったけれど、私はそれがイミテーションであることに気がついた。見た事のない色だったし、その石は不自然に大き過ぎた。

明るく銀色に光る輪は、いつかメッキが少しずつはがれてしまうだろう。それでも私はそれをとても気に入った。愛らしい形をしていたし、なによりその不思議な、閉じ込められた小さな宇宙みたいな石は、初めてみる美しい色だったから。

リングが誰からのものなのかはすぐにわかった。私が、完璧な美しさには持ち得ない、少しいびつで歪んだ、チープな偶然の産物を愛している事を知っているのだ。

私の顔を覗き込むようにして、母がもう一度、小さく笑った。


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