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愛人みろく つづき

そんなわけで、みろくの家猫生活がはじまった。

はじめてのカラーにすごく不自由そうなみろく。
カラーが長いせいなのか、首を回してばかり。
色がついているから視界が悪いからなのか、

ここまで不自由そうにする子はじめてだった。
後退りしてばかりするので、後ろ向きのまま段差から落ちてしまうことも。

カラーが長いうえに色がついているから視界が悪るくて余計怖いのでは?と思ったが、
獣医さん曰くそれはないそう。
私ならいきなり視界が狭くなったらすごく怖いと思い、透明のカラーの方がよくないかと別の獣医さんに聞いたけれど、
やっぱりそれは問題ないと言われた。

すぐに慣れる。とも。

それでも、慣れるまで後ろ向きに落ちたりするってことだよね、と、
ケージに入れるのはやめることにして、ポータブルケージに変え、それまでの3階建から平家になった。(写真の背景にちょっぴり写ってるやつ)

新しいみろくハウスをみろくは気に入ってくれたようだった。

長いカラーをはめられたみろくは自分でご飯を食べれなくなった。
お水も飲めない。

カラーが長すぎて届かないのだ。

獣医さんから、ご飯を食べさせなければいけないから大変です。と言われていたのだが、
確かにウェットフードは手こずった。

カリカリは一粒ずつ食べてもらえるのだけど、
ウェットフードは一口ずつ食べてもどうしてもカラーの中にこぼしてしまう。
カラーの付け根のみろくの白い首は、クリーム色になってしまった。

こぼさないように慎重に食べさせるのはもちろんのこと、
毎回、食べ終わったら首をきれいに拭いて、
きれいになっていることと、匂いがないことを確認した。

これが結構な時間と手間のかかる作業だった。

でも、
毎日、一粒ずつカリカリを口に持っていく時間や、
毎回、ウェットフードの食べこぼしをきれいにする時間は、
とてもつもなく幸せで、
みろくとの時間がたまらなく愛おしかった。

カリカリを一粒ずつ、目を細めておいしそうにカリっカリっと食べる。
べちょべちょになりながらウェットフードを食べる。
夜寝る前に大喜びでちゅーるを舐める。

注射器でお水をごくごくと飲み、
口を閉じて「いらない」というまでお水を口に入れる。

すべてが愛らしい。

私が食べさせないとご飯を食べれず、お水も飲めない。

朝起きてから寝るまで、
何をするよりも先にみろくの世話を一番に毎日を過ごした。

赤ちゃんみたい。

大きさも人間の赤ちゃんよりちょっと小さいくらいだからだろうか。
猫の赤ちゃんを育てるときとも違う感覚。
腕の中のみろくが猫な感じがしなかった。
どう見ても猫なのに。

とにかくかわいくて、愛おしくて仕方なかった。


もともと、みろくは人たらしな要素を持っていたと思う。

外でご飯を食べはじめてからすぐになついたし、
「みー」と呼べば必ず走ってどこからともなく出てきた。

抱っこするとすぐゴロゴロと喉を鳴らし、
心地良さそうに目をつぶって甘える。

そばにいたいアピールもするし、
抱っこされたまま幸せそうにしている。

まんちーにはない要素だから、
この性格の違いがすごくかわいくて、愛しくて。

実はその時からなんだか浮気をしているような気がしていた。

そんな状態で家に入り、
しかもつきっきりで世話をしたものだから、

もうほんとにね、わかってしまった。

男の人が愛人を囲ってしまう気持ち。

こういう感じなんだな。と。


「妻のことを愛していないわけじゃないんだ。
大切に思っている。
だけど、こいつも手放せないんだ。」

「すまないと思っている。
妻には本当に申し訳ない。
妻のことを愛している。
でも、こいつのことも守りたいんだ。」

という。

自分がまさにこの気持ちで、

あぁ、愛人をかこってしまう財界人のおじさんはこんな気持ちだったんだね。と。


みろくの部屋から出ると、必ず私は真っ先にまんちーのところにいく。

まんちゃん、大好きよ。
かわゆいねー。と、

何もなかったかのように、
他の猫にうつつなど抜かしていないかのように、
本妻の機嫌をとる。


愛人みろくは、ウッドデッキからまんちーの部屋を覗き込んで鳴く。
そこに私がいると知っているからだ。
私を呼びに来る。

まんちーは窓際に行って唸り声をあげる。
サッシがあればみろくが飛びかかって来れないのを知っているから強気。

うー、、、
シャー!と。かなり強気に威嚇する。

みろくも負けじと、やんのか大勢に入る。

エキサイトしたみろくに噛まれてすごく腫れたこともある。
2度、病院に行った。

二人がやんのか体勢に入ると、
「こらこらこら。」と言いながら私は外に出て、みろくを抱いて部屋に入れる。
まんちーごめんなさい。と心の中で思いながら、
愛人のかげを一瞬だけにするために、さっと行動する。

そしてまんちーの部屋に戻り本妻の機嫌をとる。


今日もみろくは外から私を呼ぶ。
愛人は誘惑しがちなのだ。

私が部屋から出ると爪とぎをしてみせる。
そしてお尻を高くして、トントンしてとせがむ。

私はみろくの尻尾の付け根をトントンと、一定にリズムで軽く叩く。
「みーたん大好き好きよー。」とデロデロしながらみろくのご機嫌をとる。


そして、まんちーの元に戻る。

なにごともなかったかのように。


愛人はかまわせるのが上手。
ほおっておけないようにする方法を心得ている。






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