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アジアの旅②:ブータン(後編)【苦行と聖なる僧院と焼石風呂】

2019年8月に出かけたブータンの夏休みの記録、後編はブータン観光のハイライトと言えばここ、タクツァン僧院です。

前編はこちらに ↓


前日プナカからパロに戻る途中で立ち寄った子宝の寺、チミラカンでは車を降りてからなだらかな坂道をかなり歩きました。その時ガイドさんが「明日のタクツァンの予行演習ですね。」とにこやかに言うのを聞いて心に暗雲が。。。

実は今回のブータン行きの一か月前くらいからタクツァン登山に向けてウォーキングやジムでのトレーニングを強化しようと思っていました。しかし実際は思いがけず仕事は忙しくバタバタしていて結局何の準備もできず。今、この程度の坂道でゼーゼー言ってる自分。こんな体たらくで大丈夫なのか。。。

そして当日。曇りのち雨の天気予報は大ハズレで快晴。パロの町から車で20分程度で登山口に到着しました。

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入山手続きして杖をお借りして登山スタート。断崖絶壁に建つ僧院を目指します。

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登山の際には途中まで馬に乗っていくこともできます(オプション)。我々は利用しませんでした。自分の足で行ってこその苦行、と思いまして。というよりヤケクソに近い。もう後戻りできないと観念したのです。

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真ん中の山の上の方にポツンと白く見えているのがゴール。と、遠い。見なかったことにして無心で歩こう。スタート地点からすでに標高は2500mあり、ゆっくり歩いていてもすぐにゼーハー息が切れる。やはり苦行であったか。苦行だわ、これは。

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狭い山道では役目を終えて下山する馬たちとすれ違う。毎日ですよねこのお仕事。ご苦労様なことです。この乗馬サービス、前半の一部までで終わりです。実はそこから先がきつい。根性なしの私は乗らなくて正解だったかもしれません。

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道中は絶景ポイント多し。なんとまあいいお天気。雨になって中止にならないかな、とちょっと考えていた自分を殴りたい。この景色にずいぶん励まされました。

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道半ばくらいにある第一展望台。標高2,800m。ミルクティーとビスケット(無料)で休憩。こんなに大勢の登山客がいたんですね。(つらくて周りが見えていない)ここには食堂もあって帰路に昼食をとることもできます。椅子もあるけど一旦座ったら二度と立ち上がれないような気がして立ったままお茶をいただきました。すでに頭の中は真っ白。

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そして第二展望台(3100m)。出発してから約2時間。見えましたー。ついに。それにしても何という場所に建てたのだ。もとは瞑想するための洞窟で、その後1694年僧院建立。しかし、1998年に火災で焼失。2005年に再建されたそうです。こんなものをこんなところに2度も造るとは。。。信仰の力は本当に凄い。

はぁー、と見とれているとガイドさんから衝撃の一言。これから僧院に入場するためには急な階段を降りてまた登らなければならないと。てっぺんに届く間際に梯子を倒された感じです。

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はい、行きます。私が悪うございました。階段を降りきるところには滝があります。かなりの水量。水しぶきがミストになって気持ちがいい。あともう少しの苦行。元気が出ました。心が折れないうちにGo!

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僧院の中は撮影禁止です。内部見学は約30分。本当に厳かな神聖な場所でした。到着するまでにいろいろ弱音・悪態を吐いていた我が身が恥ずかしい。かなりの達成感を味わいました。行ってよかったです。

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帰路は足取りも軽くスイスイ。下りなので当然ですが、僧院の崇高さに圧倒されたことも大きい。振り返る度に小さくなるその姿に手を合わせたくなりました。全行程約4時間、昼過ぎにはパロの町へ戻ってきました。

町中のレストランで昼ご飯を食べている時、「この後、予定ではまた市内の見学ですが、登山で疲れているなら石焼風呂に行ってみますか?オプションですけど。」とガイドさんが提案してくれた。二つ返事でOK。「風呂」と聞いたら登山後でなくとも入ってみたい。

ブータンの石焼風呂ドツォは、焚火で赤く焼けた石を水桶に投入してお湯にするというユニークな入浴法。石に含まれるミネラルが溶け出して疲労回復、美容効果もあるらしいです。

石焼風呂を体験したのはファームステイを営む農家。とても立派な木造の家です。軒下の装飾がきれいですね。

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入浴の前にお茶で一服。お茶受けのスナックが大籠にどーんと出てきました。トウモロコシとお米のポンポン菓子みたいなもので、素朴な味ですが何故か後を引く。食べだすと止まらない。

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石焼風呂は個室になっていて家族や友人で貸し切りできます。木桶の三分の一くらいが外側にあり、スタッフの方が外から焼石を投入してくれる。柵があるので石が体に触れることはありません。じゅわーっとすごい水蒸気。水はあっという間に適温のお湯となる。檜風呂のようないい香り。思わずうなってしまいます。

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いやー、いいお湯。発汗作用がすごい。体にミネラル分が浸み込むような気がします。浴室内はとても清潔。タオルもちゃんと用意されていました。

入浴後は農家の中を見学させてもらいました。今度来たらファームステイもいいなぁ。牛の世話や農産物の収穫など色々な体験プログラムが用意されているそうです。昭和っぽい居間ですすめられたのはお酒。日本酒のような暖かい米のお酒に卵が入っている、つまりたまご酒。お風呂上りでのぼせているところにこれかー? しかし、不思議に酔わない。ミネラル効果でしょうか。

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この石焼風呂、確かに効きました。あんなきつい登山をやって翌日起きられるのか不安だったのですが、目覚めは爽やか筋肉痛もなし。びっくりです。

最終日も寺院、絹織物の工房などを見学、そして町中の市場で唐辛子、山椒などのスパイス、バター茶用の茶葉、チーズなど節操なくお買い物。

ブータンのすべての建物は窓枠を蓮の花の形にするという法律があるそうで、お寺、学校、役所、病院、住宅、食堂、バーもすべて同じ形の窓。そのため町全体に調和のとれた美しさがあります。

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山の麓に家が点在する様子はなんだかスイスやオーストリアの山岳地方のよう。

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今回ずっと我々のエスコートをしてくれたガイドさんは息子と同い年。精悍な、という形容詞がぴったりの好青年でした。非常にわかりやすい流暢な英語を話し、ガイディングも上手。ブータンの言語ゾンガ語と英語のほかにヒンディー、広東語もできる。驚いたことに今まで一度も国外に出たことがないとのこと。ブータンは英語教育に力を入れていて小学校から英語の授業があり、英語を話せる人が多い。日本だって学校の英語授業はたくさんあるのにこの違いは何なのでしょう。

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そんな話をしていたら、このガイド君「実は2週間後に初めての海外旅行でタイに行きます。」と嬉しそうに言う。「タイで何がしたいの?」と聞くと「海が見たい。シーフードが食べたいです。それでパタヤに行くのです。」

なるほど、海かぁ。そうだよね、見たことないもんね。とほほえましく聞いていたのですが。。。パタヤ。この無垢な若者がパタヤへ。彼の眼にあの騒がしくて猥雑なビーチロードはどう映るのか。何だか心配。悪い姐さん達に騙されないといいけど。しかし、これはまったくもって余計なお世話。楽しんできてほしい。そんな思いでチップはタイバーツで渡しました。

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パロの静かな小さな空港から飛び立ってバンコクのやたらに広くて大混雑のスワンナプーム空港に到着すると夢から現実に戻ったような喪失感。でもそれだからまた旅に出たいと思うのでしょうね。その1年後の2020年。コロナ騒動で国外に出られず強烈な閉塞感を味わっております。1日も早い終息を願って。☀

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