エピローグ

今から15年前の朝、僕たちは慌ただしく家を出た。

 持っていくべき荷物の確認もろくにせず、やり残した感でいっぱいの心を抱えながら。 

緊張と期待、プレッシャーとワクワク、そして何より大事な大事な日の朝に限って寝坊してしまったという罪悪感と自己嫌悪とが、何だか全部一緒になってしまっている。

あれもこれも、まだ準備が出来ていない。
なんてことだ。開店まであと1時間も切っている。
店長のくせに、集合時間を大幅に過ぎてしまったことで、スタッフのみんなは呆れていないだろうか?
それとも、気を利かせて準備をどんどん進めてくれているだろうか?

訳のわからない感情と一緒に胃液もあがってきて、嘔吐しそうになった。 

息を切りながら、胸のムカムカを抑えながら、僕たちはその日オープンするミドリカフェへと走った。 

これは2005年から2015年まで、神戸の岡本という小さな街で営業していた、あるカフェの物語である。 

その物語を、店主だった僕の目線で語るとしよう。

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