別府八湯温泉本①
別府八湯温泉本は、今年でちょうど20周年を迎えるという。思い起こせばそうだ。私が社会人1年目のある時期に、この本と温泉スパポートを持ってまわったことがある。
温泉スパポートとは、パスポートのように行った先々の温泉でスタンプをもらい88個たまったら温泉名人として認定される仕組みだ。
あれからもう20年も経ってしまった。
あの時スタンプは何個集めたかは覚えていない。
なんでやめてしまったのかな?
うーん。と考えてみると・・
思い出した。私は確か。2度の挑戦経験を持つ。
1度目のギブアップの理由は、単純に温泉が熱かったこと。
私はお隣の大分市の出身で、別府という町には社会人になるまで、2、3回ぐらいしか来たことがなかった。
それが、別府を本拠地とする会社に就職したため、急速に別府との距離を縮めた次第だ。
大分市育ちの私にとって、別府の温泉は熱かった。
市営のとある小さな温泉に入ったことが衝撃の体験となった。
のれん1枚。
のれんをペラーンとくぐったら、もうそこには浴場が広がり、全裸のおばあちゃんがひとり。
スローモーションのような動きで洗面器を使って、浴槽のお湯を自分にかけていた。
勇気を出して、友人と2人挨拶をした。
おはようございます!!
ぱっしゃーーん。
おばあちゃんの洗面器のお湯が流れる音だけが響きわたる。
無視・・ いや。聞こえなかったのか?
友人と顔を見合わせ、お互いうなずき、何事もなかったように服を脱ぎ、まずは体を洗った。
その間におばあちゃんはいなくなっていた。
続いて浴槽に足をつける。
あっつ!!あっつつつつつつうー!!!!
尋常ではない。
水の出るホースを発見した友人が、「水だそ!」
と浴槽に水を投入!!これで入れる!!
その時だ。あのスローモーションおばあちゃんが、しっかりとした声で言った。
「うめんで!!」(薄めないでということ)
そう告げるとおばあちゃんはのれんの向こうへ行ってしまった。
一体いつ戻ってきたの?!怒られた私達。開き直った。
ホースがあるということは、うめて良いんよ!
水をいれてやるー!!!!
そして、こんな熱い温泉二度とくるものか。
きっとこの温泉だけが熱いのよね。
次行こ!次!
私達は、のれん1枚ではなさそうな、大きな浴槽で有名な市営温泉をチョイス。
次は大丈夫でしょ。
甘かった。
有名な大きな浴槽に足をつけた瞬間。
あっつ!あっつつつつつつうー!!!!
足も真っ赤だ。もうこれはコント。
ただ、さっきとは違うこともあった。
そこで入っていたおばあちゃんは、優しい人だった。
「あんたたち。別府の人じゃないやろ。別府の温泉は熱いんで。」
おばあちゃんに大笑いされ、励まされながら、私達は熱いお湯に入ることに成功!!
全身真っ赤になりながら、遠ざかっていく別府との距離を感じた。
さらば別府。
この日を境に、私と友人は長湯温泉、黒川温泉へと方向修正を行い、別府温泉を訪れることはなくなった。
1度目のスパポートとはここでお別れとなった。
今では、この2つの温泉もリニューアルされ、浴槽も熱湯とぬる湯に分かれている。
そして今の私は熱湯にも気持ちよく入れる。
②へ続く
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