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よの13 そっくりな人

そっくりなひとを見かけることがある。

この間も取引先のお客様にそっくりなひとを見かけた。
あれはどうみても山本さんだ。
なんでこんなところにいるんだろうと思いながら近づいていって、
「こんにちは~」と声を掛けかけると、
相手は怪訝な顔でこちらを見た。

あれ?

全くの別人だった。

恥ずかしさ一杯で語尾をごまかしながら、
さりげなくその場を立ち去る。

そんな経験が仕事柄、数回、いや結構ある。


しかしながら。
後であれは本当に別人だったのだろうかと思うこともある。
あんなにそっくりな人が世の中にいるものだろうか。
どうみてもその人そのものにしか見えないのだが。


話しは変わるが・・

仕事柄多くのお客様と接することもあってか、
突然声を掛けられて
なかなかお客様の名前を思い出せないことがある。

そういう場合、
大抵は(悟られないように)相手と話しているうちに思い出してくるものだ。


この間。
道でばったりあった人に声を掛けられた。

が、思い出せない。

誰だろう?
どこかで会ったような気がするのだが。
名前が出てこない。

全く誰だかわからないが、
とりあえず相づちを打ちながらも、必死で思い出そうとする。

が、思い出せない。

ただ相手は親しそうに話してくる。

どこかで会ったような気がするのだが。
誰だかは思い出せない。

相手に悟られないように必死で考える。

いつもは相手の話す内容から思い出してくるのだが、
どういうわけか今日に限って思い出せないのだ。

「この間送って頂いて助かりました」と相手。
何を送ったのだろうと思いながらも、
「そうですか。それは良かった」と相づちを打ってみるが、どうも話しが噛み合わない。

相手も何だか話しが噛み合わないことに気づきはじめて会話が止まった。

しばし沈黙が続いた。

「・・・・・・」

駄目だ。

思い出せない。

限界だ。

恥を忍んでどなたかお訊ねしよう。


と、
相手に話しかけようとしたその瞬間、相手は突然、
「すいません。間違えました」
と照れくさそうに去っていった。


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kawawano


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