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「自分の人生をどう生きるか」ボクフク講義レポート(2022.11.18)

秋も深まる京都、立命館大学衣笠キャンパスで、先日、み・らいず2代表・河内崇典による講義(通称、”ボクフク”講義)が行われました。

今回は、『ぼくは福祉で生きることにした』企画にも関わったライターの高田ともみが、(主観で)その様子をレポートします!

「ぼくは福祉で生きることにした」=ボクフクは、出版して終わるのではなく、この先につながるいろんな「ボクフク」を応援するためのプロジェクトとして、活動を広げていく予定です。プロジェクトの始動はまもなく!今後の発信をお待ちください。

(執筆/高田ともみ・取材日/2022.11.18金)


自分の未来を考えるきっかけに

今回、河内さんが講義を行うことになったのは、教職員課程を受講する2年生を中心とした学生さんたち。

教職免許には、現在、必須履修科目として「介護等体験」の実習が求められています。「教員になるために、なぜ介護実習が必要なのか?」学生の中には、こんな疑問を持つ人も少なくありません。いきなり「介護体験」と言われても、不安や緊張、戸惑いもきっとあるでしょう。

どんな気持ちや心構えで向き合えばいいのか。実習を前に、教員を目指すみなさんの疑問や不安を解消する目的も兼ね、講義は、講義+ワークショップのスタイルで行われました。

▼今回の講義をアレンジしたのは「一般社団法人Face to Fukushi」。河内さん自身も共同代表を務める、福祉業界の人材育成事業などを行う団体で、この日は事務局・池谷徹さんと共に登壇です!



教員に介護実習、なぜ必要なのか?


さて、ボクフク=「僕は福祉で生きることにした」は、大学生だった河内さんがひょんなきっかけから福祉の道を選ぶことになった軌跡、そして未来へのビジョンが描かれた本です。

よって今回の講義は、「ボクフク」ならぬ「ボクキョウ」、つまり、「僕は教育で生きることにした」がサブテーマ。若き教職員のたまごたちに、河内さんの経験や言葉がどう響くのか、ドキドキしながら私も講義を見守ります。

冒頭、河内さんがお話しされたのは、自身が学生時代に障害福祉に出会い、その後もなぜ福祉の道に進むことになったのか、きっかけとなった出来事でした。(詳しくは『ぼくは福祉で生きることにした』1章をぜひ!)

そして、それまでのご自身の経験や、今、み・らいず2として向き合っている課題を踏まえて、こんなふうに話してくださいました。

「今や、学校教育でいえば、1クラス(40人)のうち、6人に1ひとりが発達障害だと言われています。また、不登校の子、子どもの貧困、といったことが大きな社会課題になっている。さらに、そこには保護者が持つ障害や介護などの問題も絡んでくることがあります。なぜ教員になるために介護実習に行かなくてはならないのか、と疑問を持つ人も多いと思いますが、今や教師は「障害」と無関係ではないんです」

その言葉に、私もハッとしました。介護というテーマを、解像度高くみてみる。そうすると、実習で得られる経験や体験は、教職員の道でも必ず生きてくることがわかる、と河内さんは続けます。

「だからこそ、なぜ教員になりたいのか、そのきっかけや転機になった出来事を、よく思い返してみてください。そして、いまの自分の思いを知り、未来を思い描いてみる。教員になることは、決してゴールではありません。どんな教員になりたいのか、教員になって何をしたいのかを真剣に考える。自分にとってのきっかけを、大切にしてほしい

100人ほどが耳を傾ける夕方の講義。当初は静けさも漂う講義室でしたが、河内さんの経験と実感のこもる話が進むにつれ、前のめりに耳を傾ける学生さんたちがみられるようになりました。

大学生に、これだけは伝えておきたい

ここで、河内さんが「大学生に伝えたいこと」として伝えられたポイントを、いくつかピックアップしてみます。

介護実習に向けての心構えやアドバイス、これからの自分の人生を考える時のヒントになれば、ということで伝えられたメッセージの一部です。

●頭でっかちにならない

「介護と聞いて、不安になったり、ネガティブな気持ちになったりすることもあると思います。でも、こうしなきゃ、と頭でっかちになる必要はない。その場を一生懸命、楽しく過ごそうと思っていたら、高齢者でもどんな障害を持つ人でも、応えてくれる。介護の技術があるかどうかよりも、その場を楽しもうとしたり、その人の話や傾聴しようという気持ちや姿勢の方が大切です」

●キャラを演じてみる

「(河内さん自身、大学生の時初めて入浴介助の有償ボランティアで出会った)お母ちゃんの前ではいい子でいよう、と思った。それが積み重なって今があります。普段の自分とは違うけれど、「キャラを演じてみよう」「ここではこうしてみよう」と思って取り組んでみたら、案外「楽しめる」もの。その後に見えてくるものも必ずある」

●いい大人に出会ってほしい

「いい大人にもっともっと出会って、彼らから吸収していくことをお勧めしたい。大人や社会に対して、いろんなアラが見えすぎてしまう時代。でも、それを取り上げてあれこれ言うのは簡単なこと。理解できない大人もいるかもしれないが、少しでもいいところを見つけて、目指したいと思える大人に出会って、自分の世界を広げていってほしい」

「社会を変える」に真剣になってみる

後半は、グループに別れ、自分について知り、どう生きていきたいかを考える「ボクキョウ(=ぼくは教育で生きることにした)」ワーク。F2Fの池谷さんがファシリテーターとなってグループワークを実施しました。

ワークシートに真剣に取り組む学生さんたち


なぜ、教員を目指すのか。きっかけはなんだったのか。自分を振り返ることで、本当にやりたいこと、目指したいことを、自分で確かめていく作業です。グループワークでは、ワークででた「これまでの自分、今の自分」をシェアし、お互いの目標を確認しあっていきました。

ワークを終えた学生さんたちからは、河内さんへの質問も上がりました。「み・らいずの活動をしてきてよかったことは?」という問いに対して、河内さんは、

「この仕事は、すぐに”ありがとう”がもらえるものではない。支援が必要でなくなっていくことがある。子どもたちの選択肢が増え、進学しました、就職しました、など年賀状をもらう時に、嬉しさが込み上げる」と返答。

支援が必要でなくなっていると感じられる、成長を見せてもらえることが大きなやりがいになる。学生さんたちも大きくうなづいているように見えたのは、きっと、教育における「やりがい」も同じだからですね。


盛り上がったところで、講義終盤、河内さんは力を込めて学生さんたちにこう伝えました。

「社会を変えるを真剣に、考えてみてほしい」。
 
「社会を変える」。それは、ボクフクでも繰り返し述べられている言葉です。あまりに大きなテーマで、自分の手には追えない、と思ってしまう気持ちもわかります。けれども河内さんは畳み掛けるように、こう続けました。

「こんなふうに生きていきたい、とか、自分の夢について語ることに、気後れしたりするかもしれない。でも、どんな大人になりたいか真剣に悩むことは恥ずかしいことではない。自分と同じような志を持つ人たちと出会って、社会を変える一員にぜひ、なってほしい」

今はまだ、壮大なテーマにも思えるかもしれないけれど、自分の進んで行きたい先に、未来はある。「社会を変える」ということは、「自分を活かす」ということと同じなんだな、と気付かされたとき、私も、学生さんとともに大きな拍手を送っていました。

ボクフク講義、全国の大学に広がっていくといいな。

さあ、次はあなたにとっての「ボクフク」を考えてみる番です。

私はなぜ、この道で生きることにしたのか。その先に、どんな未来が広がっているのか。今の場所から思い描く未来は、「社会を変える」ビジョンにつながっているかもしれません。

そして、その想いをシェアしたり、一緒に悩んだり進んだりしていける仲間や場所が、少しずつ広がっていくといいなと思います。

終わった後もじんわりと胸が熱くなる、あっという間の講義。講義取材をご快諾くださった河内さん、F2F池谷さん、そして立命館大学のみなさん、ありがとうございました!


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