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私じゃない、特別。

きみは
われをひとたびも 抱くこともなく
肌を干からびさせぬ
このわびしさは死の淵をさまようとき
野に摘みし花の首輪を 君にみたてて
すべもなく ただ手にわが孤独
かくほどに心の失意は かくほどに哀しみか
何億光年待ちてさえも 来はてぬ恋よ

『草間彌生•詩集•かくなる憂い』

 草間彌生さんの詩を読んでいると、会社員には向いていないだろうな、と思う(真顔)。

「なに馬鹿なことを、相手は天才だぞ」と言われそうだが、天才だとしても誰からも見つけてもらえなければ天才にはなれない訳で。

 例えば、アウトサイダーアート界の有名人、ヘンリー•ダーガーとか。彼は生前、その才能を世界に知らしめることが一切出来ず、清掃員として働いていた。

 だが、彼が亡くなった今では、こんな日本の田舎に住む芸術に全く詳しくない私ですら、知っているほどだ。

 草間彌生さんも、瀧口修造氏や川端康成氏の評価が作品の知名度を上げるのに一役買ったと言っても過言ではないはずだ。

 だから、社会人としての日々が苦しい私もきっと評価がされていないだけで──なんてことは思わない。長年生きてきたら、さすがに自分の無能さくらいは理解出来ている。

 ただ「この人、苦手だなぁ」とか、「なんだかやり辛いな」と思った時に、「もしかして」と思えるようになってきた。

 なんて文章を書いていたら、突然私の脳内メモリーがガチャのようにぐるぐるとまわり、B'zの「Ran-1998style-」の歌詞

人間なんて誰だってとてもふつうで
出会いはどれだって特別だろう

『B'zTheBest Treasure』
B'z

 が頭の中でカプセルから弾き出された。

 人との出会いを、自分に悪意なく接してくれる人との出会いを特別だと感じられなくなったら、それは私が悪意そのものなのかもしれない。

 そんな事を考えていたら、今日感謝すべきことが。

 私には特別な才能がなかった。

 でも、特別な人を知る脳だけはあった。


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