かわせみ86

鬼滅の刃好き。日本神話や民俗学の本を読んで鬼滅との関連に気づいたことをまとめていきます。

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最近の記事

『黒死牟』生き恥のプロセス

はじめに  黒死牟が激闘の末倒された直接の原因は柱ら4名による連携の賜物だが、彼が刀身に映った自らの姿に動揺し攻撃と再生の手を緩めたことが決定打だった。牛鬼(注1)を思わせるグロテスクな見た目はショッキングな姿ではあるが、そこには単なる見た目以上の変化が隠されていると思われる。  今回は、黒死牟が感じた『生き恥』がどのようなプロセスを経て生起したのか、記紀のエピソードと照らし合わせて考えてみる。  それにあたり鬼滅のストーリーやキャラクターは記紀を多分にオマージュしている

    • 『玄弥』鬼を食う者は

       人が刀で鬼を倒し、「鬼が人を食う」世界において「人でありながら鬼を食う」玄弥は異端であるように見える。しかし実は「鬼を食う」というフォークロアが身近な昔話の中で語り継がれているのをご存知だろうか。  今回は昔話を通じて「鬼食い」について考えてみる。 もくじ 1.鬼の子小綱 2.三つの玉 3.鬼から逃げた少年 4.鬼を食う者は 5.毘沙門天と大黒天【2021/2/11 追記】 6.まとめ 1.鬼の子小綱  昔話「鬼の子小綱」は、鬼に攫われた娘が鬼ヶ島で鬼との子を産み、連

      • 『実弥』ものざねを問う者は

         禰󠄀豆子が柱合会議で実弥に試された行為はどんな意味を持つだろうか。  表向きは、禰󠄀豆子は他の鬼と違うことの証明だろう。しかし私は一連の流れは呪術的な意味を持つ儀礼のウケヒだと思っている。今回は、古事記の例を引き合いにウケヒの説明と、鬼滅におけるウケヒの関わりについて考える。 もくじ 1.ウケヒとは 2.柱合会議にて ものざねを問う者は 3.カナヲのコイントス 4.ウケヒが示したものとは 1.ウケヒとは  ウケヒとは、神意を問う呪術的な行為。(「古事記講義」三浦佑之著

        • 猗窩座と義勇の因縁とは

           最近、「節分の際、渡辺姓の家庭では豆まきをしない。なぜなら昔渡辺綱が鬼退治をしたため、渡辺家には鬼が寄りつかないからだ。」という伝承が話題になった。  実は、鬼滅の刃にも渡辺綱がモデルとなっているであろうキャラクターが存在する。今回は彼が活躍した茨木童子説話について考えていく。 もくじ 羅生門にて 茨木童子について 渡辺綱について まとめ 羅生門にて  渡辺綱といえば能の「羅生門」と後日譚の「茨木」で知られている。これは羅生門で片腕を斬られた鬼と、後日因縁の再会を果た

        『黒死牟』生き恥のプロセス

          王権説話としての鬼滅の刃

           鬼滅の刃のストーリーがさまざまな日本神話や昔話のエピソードを参考に作られているのは有名な話で、インターネット上では各所で元になるエピソードとの関連が考察されている。このレポートでは、具体的なエピソードを例に挙げながら、鬼滅の刃が物語としてどのような構造であるかを、説明語句の定義付けや歴史とともに掘り下げてゆく。  今回は、主に小松和彦氏の「鬼と日本人」を参考にしながら、日本人にとって鬼というものがどのような存在であったかを確認していく。 まず始めに日本における鬼の定義と鬼

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