米国企業と日本企業のインド出願の違いを見る インドは知的資源と考える方が良いのではないか?
本日は米国企業と日本企業のインド出願の違いからいくつかの仮説をご紹介したいと思います。
実際、これほど大きな差が出るとは思っておらず、悩んでいるところでもあります。
Questel社のOrbit Intelligenceを用いました。検索条件は、以下の二通りです。
日本については、①日本企業による出願であって、②インドに出願しているものを対象とし、③2010年から2020年までに出願された公報を、ファミリ単位で抽出しました。④Orbitの分析モジュールを用いて、総数37,000ファミリを解析し、トップ企業25社の、出願領域をグラフ化いたしました。
米国についても、①②が「米国」に置き換わるだけで基本的に同じ手法です。
ポイントは、必ずしも自国(会社所在国)に出願しておらず、インドに出願しているという点です。
日本の結果をご覧ください。
本田技研、トヨタ自動車、スズキ自動車、日産自動車の自動車組が出願上位を占めています。大体、4,000ファミリが自動車本体、周辺の素材が2,000ファミリ程度です。
ソニー、日本電気、キヤノン、日立製作所、NTTドコモ、リコー、シャープが、ICT分野で善戦しています。
では、アメリカはどうか?
なんと自動車がありません。
トップ企業は、Qualcomm。次いでMicrosoft。GoogleやIntelに加え、Appleの出願も目立ちます。24位にはAmazonもあります。
ICT、コンピューティングに力を入れていることがわかります。件数も、よく見るとComputing技術、Digital Communication技術、通信技術、皆、上位25企業だけで7,000ファミリを超えています。
さらに、分野で見ると、次に来るのが医療産業、第三位に素材産業です。
22位にはカリフォルニア大が入っているのも興味深いところです。
さて、ではこれから何が導き出せるでしょうか?
私は、次のように考えました。
①日本は自動車をインドに売ることを前提に特許を取得しているか、自動車をインドで製造することを前提に特許を取得するよう出願している。残念ながら、ICTの領域では、それほど注力している企業が多くない。
インドの持っている「高度なIT人材」を活用するというよりは、インドの市場の「安い労働力」を活用しようとしているのではないかと伺える。
②米国は薬品を除き、完成製品にかかわる領域でインドに出願をしているようにはみえない。コンピューティング技術といい、通信技術といい、そこである一定の処理を行うことを前提に、ICT技術を権利化しようとしている。
「高度なIT人材」や、「薬学・医療」開発人材、「材料開発」の人材を現地で確保し、権利化し、場合によっては事業化しようとしているのではないか。少なくとも、「インドの安い労働力」を使おうとしているようには見えない。
まだ、仮説にすぎませんが、「インド」という人的にも、市場的にも、国土としても、資源が豊富な国への異なるアプローチが行われているように思われます。
私は個人的には、「優秀な人材」を取り扱うビジネスモデルの方が、「廉価な労働力」を求めるビジネスモデルよりも洗練されているように思いますが、皆さまはいかが思われるでしょうか?
繰り返しになりますが、川瀬知的財産情報サービスは、「廉価な労働力」のためにインドに業務提携しているのではありません。彼らが極めて優れたICTと知的財産に関する経験と、能力を持っているために業務提携しているのです。
日本のお客様に、それをお届けするのが使命だと考えております。
初回は、トライアルで、無料の調査を承ることも可能です。
taketo@kawaseipr.com にメールをいただくか、ウェブサイトのフォームから、是非お気軽にご連絡ください。
2021年1月13日
川瀬知的財産情報サービス 川瀬健人
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