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未来の書店に必要なもの

ちょっと前のものなのですが、こちらの記事を読みました。

未来の書店に必要なもの。KADOKAWA 夏野社長に聞く「書店のDX」 西田 宗千佳 Impress Wacth 22/5/9

4/23から4/30まで開催された、ドワンゴのイベント「ニコニコ超会議2022」に出展したKADOKAWAのブース、「超ダ・ヴィンチストア by KADOKAWA」を取材した記事です。

KADOKAWAは埼玉県所沢市に「ところざわサクラタウン」を作り、その2階に直営書店「ダ・ヴィンチストア」を運営しています。別に本屋さんとして儲けたいということではなくて、これからの出版を模索する試みです。ということでこちらの出展ブースもそういう色彩の様子。

この記事の中でとても興味を惹かれたのが、新しい本のお薦めシステム。KADOKAWAの夏野社長の名前をもじって「ナツネイター powered by Akinator」と名付けられたそのシステムは、キャラクターを使った対面式で質問に答えていくと、お薦めの本を教えてくれます。

自動レコメンドのシステムは今でも購買履歴からのものがありますが、こちらは画像認識技術を使い、答える時の表情を判断。質問にも性格判断の要素が入っていて、そこからその人に合いそうな本を教えてくれるのだそうです。

これからの出版で一番大きな課題になってくるのは、このレコメンドの部分ではないかなと常々思っているのですよ。

自分に起きているのですが、電子書籍で読むようになってくると、新しい作品に出会うことにエネルギーがいる感じがします。

例えば漫画を紙の雑誌で読んでいる場合、パラパラとページをめくっている時に、ふといい絵とか面白い絵とかが目に飛び込んできて、それをきっかけに読んでみるということが起こります。けれど電子版の雑誌や漫画サイトではそれがない。お目当て以外の漫画を読むとしたら、自らの意思でクリックしないといけない。意識のハードルが一段高い。

また、こちらは紙の本にも影響があるのですが、リアルとネットの書店の差もあります。

昔は学校帰りに必ず本屋に立ち寄って、別に何か買うわけでもないのに店内をぶらぶらと見るという習慣がありました。そこでピンと来る出会いがあったのです。ところが仕事で帰るのがすっかり遅い最近は、その習慣が消滅。ピンと来るのはタイトルと表紙が醸し出す面白そうという雰囲気なので、それはネットでも見かけるではないかとなるのですが、あの実物がずらっと並んでいる一覧性の良さと押しの強さがないのです。昔よく起きていた表紙買いを、最近していません。

この辺りの影響で、何かのきっかけがあった時に意識して食いついていかないと、新しい物を読まない。その分のエネルギーがいる。僕の場合は、仕事絡みの部分があるので、むりやり自分に読むことを強いているわけですが、そうじゃなければ多分そのままどんどん読まなくなっていくと思われます。

逆に、一度購買意欲に小さくてもいいから火がつくと、ネットならちょこちょこっとクリックすればすぐ買えるし、まとめ買いも簡単だという利点があります。特に電子書籍のまとめ買いはやばいですね。たくさん買った実感が全然ないんですよ。リアル書店だったら多すぎるから少しずつそろえていこうというブレーキがかかるのに、それがまったくありません。

ネット書店ができたころから、初版部数が全体的にどんどん減っていて、ヒット作とそれ以外の間の売り上げの格差がひどくなっているという傾向があります。こういう影響が僕だけではなくて、大なり小なりみんなの購買行動に出ている結果なのではないかな。

そこで売り手としては、新しい出会いの仕方を模索しないといけない。最初の購買意欲の火、「へえ、面白そう」という興味をどう引くか。いくつか新しいパターンも出ています。そこがもっともっと発展してほしい。

そういうところで、このシステムはとてもよさげな気がします。記事を読んだ感じでは、店舗に置かれる一種のアトラクションのように作られているみたいですが。

もしこれが、書店アプリの機能の一つとして実装できたら、とてもいいのでは。そのまま試し読みできればなおよし。今の購入履歴によるレコメンド機能より精度が高そうです。

こういう新技術によって、もっと購買喚起力の高いお薦めが可能となり、新しい作品と読者の出会いが生まれるようになるといいなあと思います。どう進化していくのでしょうか。

(ブログ『かってに応援団』より転載)

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