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銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE

2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
明るく楽しく激しい、セルフパブリッシング・エンターテインメント・SFマガジン。気鋭の作家が集まって… もっと詳しく
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#近未来小説

目次

各作品の第1話へのリンクです。 (作者50音順) 神楽坂らせん 宇宙の渚でおてんば娘が大冒険『ちょっと上まで…』 かわせひろし 少年とポンコツロボと宇宙船『キャプテン・ラクトの宇宙船』 道具として生まれ命を搾取されるクローンたち『クローン04』 にぽっくめいきんぐ 汎銀河規模まんじゅうこわい『いないいないもばあのうち』 宇宙人形スイッチくん夫婦の危機を救う『アリストテレスイッチ』 幾つもの世界と揺らぐリアリティ『町本寺門は知っている』 波野發作 銀河商業協同組合勃興記

クローン04 第14,15最終話

  十四 彼もまた  長引く戦いに、リンスゥの身体が悲鳴を上げ続けている。  クロックアップし、身体の動きをプログラムに委ねている分、痛みに対して敏感になった。意識を身体を動かすことに向ける必要がなく、これだけ激しく動いている中でも冷静に状況を感じることができるからだ。  激しい息づかい、ふみこむ足音、ナイフが風を切り、時折はじきあう。そんな目まぐるしい戦いの中でも、リンスゥの意識はそれと少し距離を置いている。周囲の音は聞こえているのに、同時に静まり返っていて、リンスゥには

クローン04 第13話

  十三 彼女の決意が 日が沈み、夜はふけゆき、月が高く昇った。  この近辺は歓楽街のような不夜城というわけではない。一軒、また一軒と営業が終わり、通りは暗くなっていく。  街中が店じまいして人通りが少なくなるのを待って、リンスゥはシロウの部屋の窓からそっとぬけ出した。  となりの建物との間隔はせまい。逆にそれを利用し、壁に背中をつけ、向こうの壁に両足を突っ張って、体を支える。腕を使い、少しずつずらしていくようにして移動する。  これはロッククライミングで、体が入る大きな裂

クローン04 第12話

  十二 私がいたら 「リンスゥのベッド、シーツだけじゃなくて下の布団まで穴開いちゃったし、かえないとねえ」  話しかけたのはマリア。襲撃され荒らされたリンスゥの部屋から自室に移動して、二人の枕を自分のベッドに並べている。 「うん……」  答えるリンスゥ。破れたパジャマをぬいで新しい物に袖を通していた。気のぬけた返事。  その口調にマリアは振り返る。リンスゥはどこかぼんやりと、心ここにあらずといったふう。  それを、さっきの事態の反動だろうとマリアは受け取った。戦闘型のクロ