マガジンのカバー画像

銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE

2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
明るく楽しく激しい、セルフパブリッシング・エンターテインメント・SFマガジン。気鋭の作家が集まって… もっと詳しく
¥100 / 月
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

目次

各作品の第1話へのリンクです。 (作者50音順) 神楽坂らせん 宇宙の渚でおてんば娘が大冒険『ちょっと上まで…』 かわせひろし 少年とポンコツロボと宇宙船『キャプテン・ラクトの宇宙船』 道具として生まれ命を搾取されるクローンたち『クローン04』 にぽっくめいきんぐ 汎銀河規模まんじゅうこわい『いないいないもばあのうち』 宇宙人形スイッチくん夫婦の危機を救う『アリストテレスイッチ』 幾つもの世界と揺らぐリアリティ『町本寺門は知っている』 波野發作 銀河商業協同組合勃興記

いつまでも変わらぬ愛を

 私はじっと息をひそめていた。  奥の部屋で彼が原稿を書いているから。  その邪魔をしないようにソファーに座り、身じろぎもせず、じっと待つ。  音をたてるなんてもってのほか。動く気配でさえ、彼の集中をさまたげるかもしれない。  だから私は、じっと待つ。  ただ、じっと。  ひたすら、じっと。  部屋からはかすかな打鍵の音だけが伝わってくる。  彼が使っているのは古風なメカニカルキーボード。今は思考入力が当然だ。脳波から考えていることを読み取り、文章の形に整えて表示する。  だ

キャプテン・ラクトの宇宙船 おまけ漫画①

にぽかわせらせんレトロゲーム座談会

かわせ:こんにちは。『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』編集長かわせです。今回もメンバーの皆さんの活動を紹介するシリーズ。にぼっくめいきんぐさんのお仕事について、座談会形式でお送りします。にぽさんはかなり手広く活動されていて、今回取り上げるのはゲームアーカイブについてです。よろしくお願いします。 にぽく:よろしくお願いします! かわせ:さらにはですね、今回は神楽坂らせんさんにも参加していただきます。よろしくお願いします。 らせん:よろしくお願いしまーす! かわせ:

遥か彼方の… 第1話

かわせ山田にじみ異世界家族対談

かわせ:こんにちは。ガンズ編集長かわせです。  こちらでは作品連載だけでなく、メンバーそれぞれの活動もご紹介していきたいと思いつつ、だいぶ間が空いてしまいました(反省)  気を取り直しての再開一発目は、先日、人格OverDriveでの『にじみ』連載を無事完結されました、山田佳江さんをお迎えしてお送りします。 山田:こんにちはー。よろしくお願いいたします。 かわせ:よろしくお願いしますー。  さて今回は『にじみ』連載完結記念ということなのですが、僕も読ませていただいてました

クローン04 第14,15最終話

  十四 彼もまた  長引く戦いに、リンスゥの身体が悲鳴を上げ続けている。  クロックアップし、身体の動きをプログラムに委ねている分、痛みに対して敏感になった。意識を身体を動かすことに向ける必要がなく、これだけ激しく動いている中でも冷静に状況を感じることができるからだ。  激しい息づかい、ふみこむ足音、ナイフが風を切り、時折はじきあう。そんな目まぐるしい戦いの中でも、リンスゥの意識はそれと少し距離を置いている。周囲の音は聞こえているのに、同時に静まり返っていて、リンスゥには

クローン04 第13話

  十三 彼女の決意が 日が沈み、夜はふけゆき、月が高く昇った。  この近辺は歓楽街のような不夜城というわけではない。一軒、また一軒と営業が終わり、通りは暗くなっていく。  街中が店じまいして人通りが少なくなるのを待って、リンスゥはシロウの部屋の窓からそっとぬけ出した。  となりの建物との間隔はせまい。逆にそれを利用し、壁に背中をつけ、向こうの壁に両足を突っ張って、体を支える。腕を使い、少しずつずらしていくようにして移動する。  これはロッククライミングで、体が入る大きな裂

クローン04 第12話

  十二 私がいたら 「リンスゥのベッド、シーツだけじゃなくて下の布団まで穴開いちゃったし、かえないとねえ」  話しかけたのはマリア。襲撃され荒らされたリンスゥの部屋から自室に移動して、二人の枕を自分のベッドに並べている。 「うん……」  答えるリンスゥ。破れたパジャマをぬいで新しい物に袖を通していた。気のぬけた返事。  その口調にマリアは振り返る。リンスゥはどこかぼんやりと、心ここにあらずといったふう。  それを、さっきの事態の反動だろうとマリアは受け取った。戦闘型のクロ

クローン04 第11話

十一 交換可能の部品 外は嵐。夜半過ぎ。  表の荒れくるう闇とは対照的に、その部屋は明るい光に満たされていた。  単に輝度の高い照明が点いているだけではない。白い壁、白い天井、そして並ぶ機器類も白い外装をしており、ことさら明るい印象を強めている。  そこに白衣を着た男がいた。そこら中で光るモニターをのぞきこんでいる。その男がおどろいたようにつぶやいた。 「九十六号が仕留めそこなったって?」  ここは暁里(シャオリ)生物科技本社検査室。そこで様々な機器に取り囲まれるようにして

クローン04 第10話

  十 私たちと同じ 「え、おばちゃん出かけたの?」  買い出しに行き、寄り道してすっかり遅れて、おばちゃんに怒られるとあわてたマリアとリンスゥ。しかし店にもどってみると、当のヤーフェイはそこにいなかった。  それを伝えてくれたのは夕方早くにやってくる常連の三人、ワン、グォ、チェン。いつもの席ではなく、奥のテーブルに座っている。小太りのワンが外を指さした。 「何か急用とかで、今出てったよ。二人を待ってたみたいだったけど」 「あれー、これはかなり怒られるね」  リンスゥと目を

だっだーんぼよよんぼよよん

クローン04 第9話

  九 それ以上の存在 「これが街頭センサーの記録だ」  壁の大型スクリーンに映し出されているのは、東京都市部の俯瞰図。そこに一本の赤い線が描かれている。線は、あるところではまっすぐ大胆に進み、あるところでは細かく向きを変えて、くねくねと動き回っている。  新宿近郊を動き回っていたその線は、急にその場をはなれる動きを見せる。公園内に侵入したのち、さらに離脱して海へと向かう。そして海沿いの地域で、ぶつぶつととぎれ、やがて消えていた。 「全域をカバーしているわけじゃないんだな」

クローン04 第8話

  八 プリンの日  がちゃーん!  かん高い破壊音が、昼下がり休憩時間中の店内にひびいた。  居合わせた人たちがおどろいて肩をすくめ、音源を振り向く。  視線の先には、一人の女性。  すらりとした立ち姿。  整った、それでいてどこか少女の面影を残す顔立ち。  ただし今、その表情は強ばっている。  固まって立ちすくんでいるのは、リンスゥだった。  両手はお腹の前にささげる形。右手にはあわ立つスポンジをにぎっている。その姿勢で、下を向いて動かない。  かすかに眉をひそめ、口元