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かわせひろし
2018年4月5日 16:30
八 トビィ、気がつく「新聞ー! 新聞ー! 連続殺人の容疑者が捕まったよう!」 新聞売りが、道行く人に声を張り上げている。「一部ください」「あいよ!」 トビィは新聞を一部買った。アンナにお使いを頼まれたのだ。第一面に、連続殺人事件の容疑者が捕まった、と大きく出ている。記者に答えているギブンス警部の写真付きで。 容疑者はショーン・ウォルター。三人の被害者と顔見知りで、前科持ち。まあ、
2018年3月4日 14:08
五 アンナ、聞き込みに行く「聞きこみに行くわよ!」 昨日、死体置場で死体を見たアンナは、帰ってからも、それを思い出してか今ひとつ元気がなく、食欲もわかない様子だったが、翌日にはすっかり調子を取りもどし、朝からやる気満々だ。「聞きこみって、どうするんですか?」「やあね、ちゃんと本読んだ?」 アンナは、仕方ないわねえ、という顔でトビィに説明を始めた。「聞きこみは捜査の基本! たくさん
2018年2月2日 21:51
三 トビィ、探偵助手になる 雇われたばかりで一番下っぱの召使いのトビィの仕事は、みんなの仕事を色々と手伝う事だった。 そういう意味では、市場で働いていた時と変わらない。台所仕事を手伝って皿洗いとか、銀の食器を磨いたりとか、屋敷中のランプを掃除したりとか。それに、買い物につきそって荷物持ちしたり、お使いに行ったり。仕事はたくさんあって、休むひまもなかった。 最初の印象と違って、執事のアル
2018年1月1日 16:13
一 トビィ、アンナに出会う 時は十九世紀末、所は大英帝国の首都、ロンドン。公園に面して立ち並ぶ大きな建物の中の、とある屋敷の一室。がっしりとした本棚に並ぶ書籍。壁にかかる世界地図。そのとなりにある移動式の黒板に、書き残された英単語のつづり。 どうやらそこは勉強部屋のようだった。背の高い窓から、柔らかな午後の日差しが差し込んでいる。 その部屋の中央に置かれた円卓で、一人の少年がノートに向